中央教育審議会(答申) 
  
         新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について

                                                                                                      平成27年12月21日



 提言項目

  はじめに

  第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について

   第1節 教育改革、地方創生等の動向から見る学校と地域の連携・協働の必要性
     1.社会の動向と子供たちの教育環境を取り巻く状況等
     2.学校と地域の連携・協働の必要性

  第2節 これからの学校と地域の連携・協働の在り方
     1.これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿
     2.学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築
     3.学校と地域の連携・協働を推進するための体制整備


 第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について

  第1節 コミュニティ・スクールの意義・理念等
    1.コミュニティ・スクールの意義・理念
    2.コミュニティ・スクールの現状等

  第2節 これからのコミュニティ・スクールの仕組みの在り方
    1.コミュニティ・スクールの仕組みの基本的方向性
    2.コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討

  第3節 コミュニティ・スクールの総合的な推進方策
    1.国におけるコミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策
    2.都道府県・市町村の役割と推進方策


 第3章 地域の教育力の向上と地域における学校との協働体制の在り方について

  第1節 地域における学校との連携・協働の意義

  第2節 地域における学校との連携の現状等
    1.これまでの地域における学校との連携の現状
    2.地域における学校との連携の課題と新たな関係(連携・協働)

  第3節 地域における学校との協働体制の今後の方向性
    1.地域における学校との協働体制の目指す姿
    2.地域における学校との協働体制の整備の方向性

  第4節 地域における学校との協働のための取組の推進
    1.地域における学校との協働のための体制の整備
    2.地域における学校との協働による活動の充実

  第5節 国、都道府県、市町村による推進方策
    1.国の役割と推進方策
    2.都道府県・市町村の役割と推進方策


 第4章 コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の一体的・効果的な推進の在り方について
    1.コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の関係の在り方
    2.両者の一体的・効果的な機能の発揮のための方策


 おわりに


はじめに
 平成27年4月14日に文部科学大臣より中央教育審議会に対し、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」の諮問が行われた。諮問においては、社会情勢の変化や教育改革の動向等を踏まえたコミュニティ・スクールの在り方や、今後全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働した活動を展開するための総合的な方策、学校と地域をつなぐコーディネーターの配置のための方策、地域の人的ネットワークが地域課題解決や地域振興の主体となる仕組みづくり等について審議が要請された。
 これらのうち、コミュニティ・スクールに関わる事項に関して専門的な審議を深めるため、初等中等教育分科会の下に「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」が設置され、地域における学校との協働体制の在り方に関わる事項に関して専門的な審議を深めるため、生涯学習分科会の下に「学校地域協働部会」が設置された。両部会は、平成27年4月以降、必要に応じて合同審議を行うなど緊密な連携を図りながら、学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策に関し、集中的に審議を行った。
 本答申全体を流れている理念は、未来を創り出す子供たちの成長のために、学校のみならず、地域住民や保護者等も含め、国民一人一人が教育の当事者となり、社会総掛かりでの教育の実現を図るということであり、そのことを通じ、新たな地域社会を創り出し、生涯学習社会の実現を果たしていくということである。
 この理念を実現すべく、本答申では、これからの教育改革や地方創生の動向を踏まえながら、学校と地域の連携・協働を一層推進していくための仕組みや方策を提言している。
 具体的には、まず、第1章では、学校と地域の「パートナーとしての連携・協働関係」への発展の必要性とともに、これからの学校と地域が目指すべき連携・協働の姿を示した。
 次に、第2章では、学校が抱える課題の解決を図り、子供たちの教育活動等を一層充実していく観点から、地域住民等と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」に転換していくための持続可能な仕組みとして、コミュニティ・スクールの仕組みの制度的な見直しや推進方策を提言している。
 さらに、第3章では、より多くの、より幅広い層の地域住民が参画し、子供たちの成長を地域で担うとともに、持続可能な地域社会を構築する観点から、社会教育の体制として、地域住民や団体等のネットワーク化等により学校との協働活動を推進する「地域学校協働本部」の整備を提言している。
最後に、第4章では、コミュニティ・スクールと「地域学校協働本部」が相互に補完し、高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していくための在り方について提言している。
 本審議会としては、本答申が、子供たちの豊かな学びと確かな成長の保障と、子供を軸に据えて人々が参画・協働していく社会の実現に寄与することを切に願う。

第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り
第1節 教育改革、地方創生等の動向から見る学校と地域の連携・協働の必要性
【ポイント】

◆地域社会のつながりや支え合いの希薄化等による地域社会の教育力の低下や、家庭教育の充実の必要性が指摘されている。また、子供たちの規範意識等に関する課題に加え、学校が抱える課題は複雑化・困難化している状況。
◆「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた学習指導要領の改訂や、チームとしての学校の実現、教員の資質能力の向上等、昨今の学校教育を巡る改革の方向性や地方創生の動向において、学校と地域の連携・協働の重要性が指摘されている。
◆これからの厳しい時代を生き抜く力の育成、地域から信頼される学校づくり、社会的な教育基盤の構築等の観点から、学校と地域はパートナーとして相互に連携・協働していく必要があり、そのことを通じ、社会総掛かりでの教育の実現を図る必要。


1.社会の動向と子供たちの教育環境を取り巻く状況等
(1)社会の動向
(少子高齢化、グローバル化等の進行)
 我が国は、現在、急激な少子化・高齢化の中にあり、2030年には、65歳以上の割合は総人口の3分の1に達し、そうなると生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少すると見込まれている。日本全体として、人口減少を克服し、地方創生を成し遂げるため、人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組むこと、また、そのために国民一人一人がより主体的に社会を創り出していくことが求められている。
 また、グローバル化や情報化が進展する社会の中で、多様な主体が速いスピードで相互に影響し合い、一つの出来事が広範囲かつ複雑に伝播してきているために、先を見通すことが一層困難になっている(1)。

(1)子供たちが将来就くことになる職業の在り方についても、技術革新等の影響により大きく変化することになると予測されている。子供たちの65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市立大学大学院センター教授)、2011)との予測や、今後10年~20年程度で半数近くの仕事が自動化される可能性が高い(マイケル・オズボーン氏(オックスフォード大学准教授)、2013)などの予測がある。また、2045年には人工知能が人類を越える「シンギュラリティ」に到達するという指摘もある。


(地域社会の教育力の低下)
 都市化や過疎化の進行、家族形態の変容、価値観やライフスタイルの多様化等を背景とした地域社会等のつながりや支え合いの希薄化によって、「地域の学校」「地域で育てる子供」という考え方が次第に失われてきたことが指摘されている。教育は、言うまでもなく、単に学校だけで行われるものではない。家庭や地域社会が、教育の場として十分な機能を発揮することなしに、子供たちの健やかな成長はあり得ない。家庭を巡る状況の変化や、地域社会の教育力の低下に伴い、子供の教育に関する当事者意識も失われていくことで、学校だけに様々な課題や責任が課される事態になっていないだろうか。家庭や地域社会での教育の充実を図るとともに、社会の幅広い教育機能を活性化していくこ
とは、喫緊の課題となっていると言わなければならない。また、特に地域を巡る状況は、上述の現代的事情を背景に、世論調査結果によれば、国や社会のことに目を向けるよりも、個人生活の充実など個人個人の利益を大切にする傾向にあり、そのため、互助・共助の意識も希薄なことから、貴重な学びや成長の機会・場が失われ、地域社会の停滞につながる一因となっている。これまで活躍してきた社会教育関係団体も、活動への参加者が十分集まらず、その役割を十分に果たせていないケースが見られる。これからの時代においては、地域社会での教育の充実に向けて、様々な機関や団体等が連携し、ネットワーク化を図っていくことが求められている。

(地域コミュニティを創出する動きの広がり)
 その一方で、各種の取組を通じて、地域住民や保護者等の側に、自ら子供たちに積極的に関わり支援することによって、自分たちの手で学校をより良くし、子供たちを育てていこうとする意識や志が生まれつつある。また、幾つかの地域では、子供も大人も自らが主体となって地域を活性化する取組に挑戦し、学校を核に、地域全体を「学びの場」と捉え、街全体の元気を取り戻しつつある。こうした意識の高まりを的確に受け止め、あるいは、一層醸成していくこと等を通じ、かつての地縁を再生するという視点にとどまらず、新たに地域コミュニティを創り出すという視点に立って、学校と地域住民や保護者等が力を合わせて子供たちの学びや育ちを支援する地域基盤を再構築していくこと、
さらには、こうした取組を広げ、常に社会全体で互いの幸せについて考え、そのために何ができるかを問い、学び続ける社会の形成を進めていくことが課題となっている。

(家庭教育の持つ重要性等)
 家庭教育は全ての教育の出発点であり、子供たちが基本的な生活習慣・生活能力、人に対する信頼感、豊かな情操、思いやりや善悪の判断等の基本的倫理観、自立心や自制心、社会的マナー等を身につける上で重要な役割を担っている。家庭では、子供が社会を生き抜く力を持つことができるよう、様々な教育資源の情報収集や活用を図るなど、それぞれできることを努力している現状がある。
 他方、近年、家庭の教育力の低下が指摘されている。特に、核家族やひとり親家庭の増加等の家族形態の変容や、地域社会のつながりの希薄化等を背景に、子育ての不安を抱える保護者の増加などが見られる。生きる力の資質や能力を身につけていく基礎をつくるため、適切な家庭教育を受けることは全ての子供にとって重要であり、親の学びや育ちを応援するとともに、家庭と地域をつなげることで、家庭教育の更なる充実を図ることが求められている。
 このほか、昨今、子供たちが被害者や加害者となる様々な事件が発生しており、地域で家庭や子供たちを見守り支えることの必要性が指摘されている。こうした観点からも、学校と地域の連携・協働を一層進めることの重要性が増している。

(2)子供たちの教育環境を取り巻く状況
(児童生徒数の減少等の状況)
 現在、児童生徒数の減少や多様化・複雑化する社会状況の変化等を背景に、小・中学校の統廃合や、高等学校の再編・統合が進んでいる。今後、少子化の更なる進行により、学校の小規模化に伴う教育上のデメリットの顕在化や、学校がなくなることによる地域コミュニティの衰退が懸念されており、各市町村(特別区を含む。以下同じ。)の実情に応じた活力ある学校づくりの推進が求められている。

(子供たちの規範意識等に関する課題)
 地域社会や家庭を巡る問題が深刻化している中、多様な価値観を持った人々との交流や体験の減少等を背景として、子供たちの規範意識や社会性、自尊意識等に対する課題、生活習慣の乱れによる学習意欲や体力・気力の低下の課題等が指摘されている。その一方で、社会貢献への高い意欲や、柔軟で豊かな感性と国際性を備えている一面も見受けられるなど、子供たちは、未来を創っていく主役として大きな可能性に満ちており、自らがこれからの未来を創り出していくという主体性とともに、その可能性を最大限引き出し、開花させていくことが求められている。

(学校が抱える課題の複雑化・困難化等の状況)
 学校における状況に目を転じると、いじめや暴力行為等の問題行動の発生、不登校児童生徒数、特別支援学級・特別支援学校に在籍する児童生徒数、日本語指導が必要な外国人児童生徒数等の増加など、多様な児童生徒への対応が必要な状況となっているなど、その環境は複雑化・困難化を極めており、教員だけで対応することが、質的な面でも量的な面でも難しくなってきている。また、子供たちが自ら課題を発見し、解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の充実など、授業革新を図っていくことが求められている。
 このような中、中学校等の教員を対象としたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)において、我が国の教員は、課外活動の指導や事務作業に多くの時間を費やし、調査参加国中で勤務時間が最も長いという結果が出るなど、教員の勤務負担の軽減が課題となっている。教員が新たな教育課題に的確に対応し、教員としての本来の職務を着実に遂行していくためには、教員が子供と向き合える時間を確保するとともに、教員一人一人が持っている力を高め、発揮できる環境を整えていくことが急務となっている。
 このほか、これまで、学校のガバナンス強化の視点から、学校評議員(2)、学校運営協議会(3)、学校関係者評価(4)の制度化等により、地域住民や保護者等の意見を学校運営に反映させる仕組みの構築が推進されてきたが、子供たちの育成の視点、学校運営の改善・充実の視点からも、地域との一層の連携・協働が課題となっている。

(2)平成12年に学校教育法施行規則の改正により設けられた制度で、校長の求めに応じ、当該学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有する者が学校運営に関して意見を述べることができる仕組み。
(3)平成16年に地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により設けられた制度で、地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組み。
(4)平成19年に学校教育法及び同法施行規則の改正により設けられた制度で、地域住民や保護者等の学校関係者が、自己評価の客観性・透明性を高めるとともに、学校・家庭・地域が学校の現状と課題について共通理解を深めて相互の連携を促し、学校運営の改善への協力を促進することを目的として行うものとして、学校に対し努力義務が課されている。


(3)教育改革、地方創生等の動向
 昨今の学習指導要領の改訂や教員の資質能力の向上等、様々な学校教育を巡る教育改革の方向性や地方創生の動向において、子供たちの成長過程における地域・社会との関わりの重要性や学校と地域の連携・協働の重要性等が示されている。学校と地域の連携・協働の在り方を検討する上で押さえるべき主な動向は、以下のとおりである。 (学習指導要領の改訂について)
 学習指導要領の改訂については、その基本的な方向性について教育課程企画特別部会で審議が進められ、本年8月に「論点整理」が取りまとめられたところである。ここでは、社会の加速度的な変化の中でも、社会的・職業的に自立した人間として、伝統や文化に立脚し、高い志や意欲を持って、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められるとしている。
 同部会の「論点整理」では、これからの教育課程には、社会の変化に開かれ、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」(5)としての役割が期待されている。「論点整理」においては、「社会に開かれた教育課程」として、次の点が重要であると示している。
 ①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、より良い学校教育を通じてより良い社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
 ②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
 ③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
 このような状況を踏まえ、今後、学校は、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、地域との連携・協働を一層進めていくとともに、地域においても、子供たちの成長を支える活動により主体的に参画していくことが求められる。

(5)「論点整理」においては、各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められていると示している。その上で、「カリキュラム・マネジメント」を捉える三つの側面として、
 ① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育内容を組織的に配列していくこと。
 ② 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
 ③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
を挙げており、また、「社会に開かれた教育課程」の観点からは学校内だけではなく、保護者や地域の人々等を巻き込んだ「カリキュラム・マネジメント」を確立していくことが重要であるとされている。


(チームとしての学校の在り方の検討)
 従来よりも複雑化・多様化している学校の課題に対応し、学校全体の総合力を一層高めていく必要性から、平成27年12月の本審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、学校は、複雑化・困難化した課題に対応し、子供たちに求められる力を身に付けさせるため、教職員が心理や福祉等の専門家や関係機関、地域と連携し、チームとして課題解決に取り組むことが必要とされている。また、学校と地域の連携を推進するため、学校内において地域との連携の推進の中核を担う教職員を地域連携担当教職員(仮称)として法令上明確化することを検討するとされている。

(これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上に関する検討)
 平成27年12月の本審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」では、学校は、「チーム学校」の考え方の下、学校現場以外での様々な専門性を持つ地域の人々と効果的に連携しつつ、教員とこれらの者がチームを組んで組織的に諸課題に対応するとともに、保護者や地域の力を学校運営に生かしていくことが必要であること、また、新たな教育的課題に対応していくためには、学校が地域づくりの中核を担うという意識を持ち、学校教育と社会教育の連携の視点から、学校と地域の連携・協働を円滑に行うための資質を養成していくことも重要であるとされている。

(小中一貫教育の制度化)
 平成27年6月、「学校教育法等の一部を改正する法律(平成27年法律第46号)」が公布され、28年4月から施行される。本改正は、学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため、小中一貫教育を実施する義務教育学校の制度を創設するものである。組織上独立した小学校及び中学校が義務教育学校に準じた形で一貫した教育を施す小中一貫型小学校・中学校(仮称)についても、今後、省令改正により制度化される。
 これらの制度改正の基本的な考え方は、平成26年12月の本審議会答申(6)にまとめられているが、同答申では、小中一貫教育の総合的な推進方策として、地域ぐるみで子供たちの9年間の学びを支える仕組みとして、小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施することが有効であり、中学校区内の小・中学校における一体的な学校運営協議会の設置を促進する必要がある旨、提言されている。

(6)「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」


(高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革)
 高等学校教育及び大学教育において、義務教育までの成果を確実につなぎ、それぞれの学校段階において「生きる力」「確かな学力」を確実に育み、初等中等教育から高等教育まで一貫した形で、一人一人に育まれた力を更に発展・向上させる観点から、平成26年12月の本審議会答申(7)を踏まえ、平成27年1月「高大接続改革実行プラン」が公表された。現在、同プランに基づき、具体的な方策が検討されている。
 高校生を地域の活動に積極的に参画させ、地域課題の解決に取り組む学習は、「確かな学力」を構成する思考力・判断力・表現力等の育成に寄与するとともに、学びへの興味と努力し続ける意志を喚起することにつながると期待される。(高等学校の特性を踏まえた学校と地域の連携・協働の在り方については第2章第2節2(3)及び第3章第4節2(3)参照)

(7)「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」


(教育委員会制度の改革)
 平成27年4月、教育委員会制度改革を柱とする「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)」が施行された。新たな制度では、全ての地方公共団体に、首長と教育委員会を構成員とする総合教育会議を設けることとなり、同会議においては、教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育等の振興を図るための重点施策等について協議を行うこととなる。
 今後、総合教育会議の活用をはじめ、首長と教育委員会が共に手を取りながら、子供たちの豊かな学びと成長を一層支援していくことが重要視されており、両者のパートナーシップの構築は、学校と地域の連携・協働を推進していく力となる。

(まち・ひと・しごと創生総合戦略等の決定)
 人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域の特徴を生かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、平成26年11月、地方創生の理念等を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が公布・施行され、同年12月には、同法に基づき、今後目指すべき将来の方向を提示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、これを実現するための目標や施策等を提示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定された。同戦略の中には、学校を核とした地域活性化及び地域に誇りを持つ教育を推進するとともに、公立小・中学校の適正規模化、小規模校の活性化、休校した学校の再開支援を行う旨が盛り込まれた(8)。
 また、平成27年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、学校を核とした地域力強化の観点から、全公立小・中学校において、学校と地域が連携・協働する体制を構築するために、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部等の取組を一層促進する旨が示されている。地方創生の実現に向けて、これからの子供たちには、地域への愛着や誇り、地域課題を解決していく力が求められる。

(8)これに基づき、平成27年1月に策定された「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」においては、地域コミュニティの核としての学校の役割を重視しつつ活力ある学校づくりを実現する観点から、市町村が、①学校統合を検討する場合の魅力ある学校づくりの一環として、統合の検討プロセスから対象校に学校運営協議会を設置し、地域の意見を最大限反映させることや、②小規模校を存続させる場合のデメリットの緩和策として、コミュニティ・スクールの
導入を契機として学校教育活動への地域人材の効果的な参画を促すなどの工夫が盛り込まれている。


2.学校と地域の連携・協働の必要性
 教育は、地域社会を動かしていくエンジンの役割を担っており、教育により、子供たち一人一人の潜在能力を最大限に引き出し、全ての子供たちが幸福に、より良く生きられるようにすることが求められている。
 学校は、全ての子供たちが自立して社会で生き、個人として豊かな人生を送ることができるよう、その基礎となる力を培う場であり、子供たちの豊かな学びと成長を保障する場としての役割のみならず、地域コミュニティの拠点として、地域の将来の担い手となる人材を育成する役割を果たしていかなければならない。一方、地域は実生活・実社会について体験的・探究的に学習できる場として、子供たちの学びを豊かにしていく役割を果たす必要がある。
 今なぜ、学校と地域の連携・協働が必要なのか。主な理由は以下のとおりである。

(これからの時代を生き抜く力の育成の観点)
 これからの子供たちには、厳しい挑戦の時代を乗り越え、高い志や意欲を持つ自立した人間として、他者と協働しながら未来を創り出し、課題を解決する力が求められている。子供たちの生きる力は、学校だけで育まれるものではなく、家庭における教育はもちろんのこと、多様な人々と関わり、様々な経験を重ねていく中で育まれるものであり、地域社会とのつながりや信頼できる大人との多くの関わりを通して、子供たちは心豊かにたくましく成長していく。地域住民や企業、NPOなど様々な専門知識・能力を持った地域人材が関わることで、将来を生き抜く子供たちに、実社会に裏打ちされた幅広い知識・能力を育成することができる。

(地域に信頼される学校づくりの観点)
 次に、学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中、困難な課題を解決していくためには、より一層地域に開かれ、地域と積極的に向き合うことで、地域に信頼される学校づくりを進めていく必要がある。地域住民や保護者等が学校運営に対する理解を深め、積極的に参画することで、学校をより良いものにしていこうという当事者意識を高め、子供の教育に対する責任を社会的に分担していくことができる。

(地域住民の主体的な意識への転換の観点)
 現代社会の変容の中、子供の教育に対する責任を地域住民が家庭や学校とともに分担していくためには、地域社会において、行政サービス等の「公助」を期待する地域住民の「受け身の意識」から、「互助・共助」の視点を持って、自ら生活する地域を創っていくという地域住民の「主体的な意識」に転換していくことが必要である。こうした意識の醸成のためには、地域住民が「学び」を通じて新たな関係を作り、それぞれで考え、成長していくことが必要である。また、今後は、子供たちを社会の主体的な一員として受け入れ、子供も大人も含め、より多くの、より幅広い層の地域住民が参画し、地域課題や地域の将来の姿等について議論を重ね、住民の意思を形成し、様々な実践へとつなげていくことが重要である。

(地域における社会的な教育基盤の構築の観点)
 地域の未来を担う子供たちの成長は、その地域に住む人々の希望である。地域社会を構成する一人一人が当事者としての役割と責任を自覚し、主体的・自主的に子供たちの学びに関わり、支えていく中で、地域住民の学びを起点に地域の教育力を向上させるとともに、ふるさとに根付く子供たちを育て、地域の振興・創生につなげるためにも、社会的な教育の基盤を構築していく必要があり、社会教育の体制を整備し、強化していくことが重要である。
(社会全体で、子供たちを守り、安心して子育てできる環境を整備する観点)
 課題を抱えた保護者や子供の孤立化に対応する観点から、全ての子供たちを守り、支える地域社会の在り方が問われている。子供たちの安全・安心の確保、非行防止、健全育成という観点からも、まずは、学校に関する活動の中で、気軽に子供たちに声を掛ける取組から始めてみることや、学校と地域の連携の中で子供たちの様子を見守っていくことが重要である。個人や個々の機関だけでは対応が困難な課題についても、学校と地域の連携・協働により保護者や子供に必要な支援を行うことで、家庭や子供の変化をもたらすことにつながる。
 また、幅広い分野における女性の活躍を促進していくため、学校と地域との連携・協働により、社会全体として子供の教育を支えていくことにより、安心して子育てできる環境を整備し、育児と仕事が両立する社会を実現していくことが必要である。

(学校と地域の「パートナーとしての連携・協働関係」への発展)
 こうした観点を踏まえ、今後、学校や地域が抱える様々な課題に社会総掛かりで対応するには、学校と地域の関係を、新たな関係として、相互補完的に連携・協働していくものに発展させていくことが必要である。すなわち、学校と地域は、お互いの役割を認識しつつ、共有した目標に向かって、対等な立場の下で共に活動する協働関係を築くことが重要であり、パートナーとして相互に連携・協働していくことを通じて、社会総掛かりでの教育の実現を図っていくことが必要である。

第2節 これからの学校と地域の連携・協働の在り方
【ポイント】

◆これからの学校と地域の連携・協働の姿として、以下の姿を目指す。
 ○地域住民等と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換
 ○地域の様々な機関や団体等がネットワーク化を図りながら、学校、家庭及び地域が相互に協力し、地域全体で学びを展開していく「子供も大人も学び合い育ち合う教育体制」の構築
 ○学校を核とした協働の取組を通じて、地域の将来を担う人材を育成し、自立した地域社会の基盤の構築を図る「学校を核とした地域づくり」の推進
◆上記の姿を具現化していくためには、学校と地域の双方で連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築が必要。



1.これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿
(1)地域とともにある学校への転換
 社会総掛かりでの教育の実現を図る上で、学校は、地域社会の中でその役割を果たし、地域と共に発展していくことが重要であり、とりわけ、これからの公立学校は、「開かれた学校」から更に一歩踏み出し、地域でどのような子供たちを育てるのか、何を実現していくのかという目標やビジョンを地域住民等と共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していくことを目指して、取組を推進していくことが必要である。すなわち、学校運営に地域住民や保護者等が参画することを通じて、学校・家庭・地域の関係者が目標や課題を共有し、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に、地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことが求められる。
 これまでの提言(9)では、地域とともにある学校の運営に備えるべき機能として「熟議」「協働」「マネジメント」の三つが挙げられており、これらはこれからの学校運営に欠かせない機能として、再認識していく必要がある。
 ①関係者が皆当事者意識を持ち、子供たちがどのような課題を抱えているのかという実態を共有するとともに、地域でどのような子供たちを育てていくのか、何を実現していくのかという目標・ビジョンを共有するために「熟議(熟慮と議論)」を重ねること。
 ②学校と地域の信頼関係の基礎を構築した上で、学校運営に地域の人々が「参画」し、共有した目標に向かって共に「協働」して活動していくこと。
 ③その中核となる学校は、校長のリーダーシップの下、教職員全体がチームとして力を発揮できるよう、組織としての「マネジメント」力を強化すること。

(9)「コミュニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりの一層の推進に向けて」(平成27年3月 コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議)、「子どもの豊かな学びを創造し、地域の絆をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策~」(平成23年7月 学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議)


(2)子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築
 学校、家庭及び地域は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互に協力していくことが重要である。地域が学校や家庭と共に教育の担い手となることが社会的な文化となっていくためにも、地域の一部の人々だけが参画し協力するのではなく、地域全体で子供たちの学びを展開していく環境を整えていくことが必要であり、子供との関わりの中で、大人も共に学び合い育ち合う教育体制の構築が必要である。
 地域には、学校、教育機関、首長部局等の行政機関、社会教育施設、PTA、NPO・民間団体、企業、経済・労働関係団体など、様々な機関や団体等がある。他方、個人として学校支援ボランティアに関わっている地域の人々もいる。子供たちや学校の抱える様々な課題に対応していくためにも、また、子供たちの生命や安全を守っていくためにも、子供を軸に据え、様々な関係機関や団体等がネットワーク化を図り、子供たちを支える一体的・総合的な教育体制を構築していくことが重要である。学校と地域が連携・協働するだけでなく、子供の育ちを軸に据えながら、地域社会にある様々な機関や団体等がつながり、住民自らが学習し、地域における教育の当事者としての意識・行動を喚起していくことで、大人同士の絆が深まり、学びも一層深まっていく。地域における学校との協働活動に参画する住民一人一人が学び合う場を持って、子供の教育や地域の課題解決に関して共に学び続けていくことは、生涯学習社会の実現のためにも重要である。
 さらに、家庭教育の支援の観点からも、地域と学校の連携が進むことで、課題を抱えた保護者に対する支援の充実につながるとともに、孤立感を抱えた保護者を含む多くの保護者に対し、学校との連携・協働による活動に参画していく機会を作ることにつながる。

(3)学校を核とした地域づくりの推進
 地方創生の観点からも、学校という場を核とした連携・協働の取組を通じて、子供たちに地域への愛着や誇りを育み、地域の将来を担う人材の育成を図るとともに、地域住民のつながりを深め、自立した地域社会の基盤の構築・活性化を図る「学校を核とした地域づくり」を推進していくことが重要である。成熟した地域が創られていくことは、子供たちの豊かな成長にもつながり、人づくりと地域づくりの好循環を生み出すことにもつながっていく。また、地域住民が学校を核とした連携・協働の取組に参画することは、高齢者も含めた住民一人一人の活躍の場を創出し、まちに活力を生み出す。さらに、地域と学校が協働し、安心して子供たちを育てられる環境を整備することは、その地域自身の魅力となり、地域に若い世代を呼び込み、地方創生の実現につながる。
 一方的に、地域が学校・子供たちを応援・支援するという関係ではなく、子供の育ちを軸として、学校と地域がパートナーとして連携・協働し、互いに膝を突き合わせて、意見を出し合い、学び合う中で、地域も成熟化していく視点が重要である。子供たちも、総合的な学習の時間や、放課後・土曜日、夏期休業中等の教育活動等を通じて地域に出向き、地域で学ぶ、あるいは、地域課題の解決に向けて学校・子供たちが積極的に貢献するなど、学校と地域の双方向の関係づくりが期待される。
 地域によっては、公民館等の社会教育施設を一つの拠点として、高齢者の健康維持や文化の伝承等の地域課題に関わる社会教育活動を、住民が主体となって活発に行っているところもある。学校という場を地域の人々が集い、学び合う場としていくだけでなく、このような拠点が学校とつながり、双方向の関係を持つことも有益である。

2.学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築
 本節1.で示した「これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿」を具現化していくためには、学校と地域の双方で、連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みを構築していく必要がある。
 現在、学校と地域の連携・協働を推進する仕組みとして、コミュニティ・スクール(10)(学校運営協議会制度)の仕組みや、「学校支援地域本部」による様々な教育活動、「放課後子供教室」の体験活動等を行う社会教育の既存の体制(11)がある。

(10)地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5に基づき、当該学校の所在する地域の住民や当該学校に在籍する児童生徒等の保護者で構成される委員が当該学校の運営に関して協議する機関を置く学校。
(11)国及び地方公共団体で分担する補助事業「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」における学校支援地域本部や放課後子供教室等(地域コーディネーターの企画調整により地域住民の協力を得て、授業補助や学校環境整備、放課後の体験活動等、様々な教育活動の支援を実施)を行う体制。第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)においては、これらの取組など「保護者はもとより、地域住民の参画により子供たちの学びを支援するための体制」と記載されている。
この他、公民館等による地域課題解決等の取組を含む様々な学校づくり、地域づくりのための活動を行う体制も含まれる。


 学校と地域がパートナーとして連携・協働するには、両者がビジョンを共有し、学びを展開していくことが重要であり、上記の既存の体制による取組を一層推進していくとともに、地域における様々な体制等をつなぐコーディネーターを配置する等の仕組みの構築や、既存の仕組みの更なる工夫が不可欠である。
 このため、本審議会では、これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿を踏まえながら、地域とともにある学校に転換していくための持続可能な仕組みとして、これからのコミュニティ・スクールの在り方について審議するとともに、地域において子供たちを支える持続可能な仕組みとして、地域における様々な体制等の在り方について審議した。(コミュニティ・スクールの在り方については第2章、地域における様々な体制等の在り方については第3章で言及)
 なお、子供たちの生きる力を育成する観点等からすれば、学校と地域の連携・協働は、公立学校にとどまらず、国立学校や私立学校においても重要なものである。第2章については、学校運営協議会の制度が公立学校の管理運営の改善を図るための仕組みであること等を念頭に、公立学校を中心に述べているものである。また、第3章における地域学校協働活動についても公立学校を中心に述べているが、国立学校や私立学校が所在する地域においては、それらの学校の教育方針や地域の実情を踏まえつつ、地域学校協働活動に取り組むことが期待される。

3.学校と地域の連携・協働を推進するための体制整備
 今後、全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう、また、住民が地域による学校との協働活動に参画する機会を得られるようにするためには、各都道府県や市町村において、子供たちの成長や地域の振興・創生に向けたビジョンを掲げ、地域住民、保護者、学校及び様々な関係機関や団体間でそれを共有しつつ、学校と地域の連携・協働を推進していく必要がある。
 このためには、都道府県や市町村の教育委員会内において、コミュニティ・スクールや学校運営改善施策を担当する学校教育担当部局と、学校支援地域本部や放課後子供教室等の施策を担当する社会教育担当部局との連携・協働体制の構築が不可欠である。
 また、首長部局等との連携・協働は、これからの教育改革の大きな柱となるものであり、学校と地域の連携・協働による取組は、地域のまちづくりや青少年健全育成、福祉、防災等の分野とも関連するものである。取組を円滑かつ効果的に進めていくためにも、総合教育会議を積極的に活用しつつ、部局横断で子供の育ちを総合的・一体的に支援する体制を構築していくことが重要である。
 さらに、学校と地域の双方に、連携・協働を推進する窓口となる人材を配置することで、相互の役割分担を進めながら、連携・協働体制を構築・強化していく必要がある。(地域連携の推進を担当する教職員は第2章、地域コーディネーターは第3章で言及)

第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について
第1節 コミュニティ・スクールの意義・理念等
【ポイント】

◆平成16年に学校運営協議会制度が導入されて以降、コミュニティ・スクールが広がり、地域住民や保護者等が力を合わせて学校の運営に取り組む動きが進展。
◆地域との連携による学校運営の改善が図られるほか、教職員の意識改革や学力・学習意欲の向上、生徒指導上の課題の解決等の成果認識がある一方、取組が保護者や地域に余り知られていない、管理職等の負担が大きいなどの課題もあり、制度面の改善や推進方策の検討に当たっては、課題認識も踏まえた検討を進める必要。


1.コミュニティ・スクールの意義・理念
 学校運営の状況が地域住民や保護者等に分かりにくく、学校の閉鎖性や画一性等の指摘がある中、時代の変化に応じて、地域住民や保護者等から、学校教育に対する多様かつ高度な要請や、開かれた学校運営を求める声が寄せられるようになっていること等を背景とし、平成16年に地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)が改正され、学校運営協議会制度が導入された。これは、平成12年の学校評議員制度による学校と地域との連携を更に一段階進め、地域の力を学校運営そのものに生かす発想からくるものである。
 学校運営協議会は、地域住民や保護者等が学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識の高まりを学校が的確に受け止め、学校と地域住民や保護者等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる仕組みとして意義を持つ。国は、制度導入後、学校運営協議会を設置する学校をコミュニティ・スクールと呼び、第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)において、コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割に拡大することを成果指標と定め、その推進を図ってきた。
 第1章で述べたように、様々な教育改革や地方創生等の動向を踏まえながら、学校と地域は一体となって連携・協働体制を築いていく必要がある。コミュニティ・スクールの仕組みについても、制度導入から10年余が経過した今、新しい時代における学校と地域の目指すべき連携・協働の姿を見つめながら、その実現にふさわしい仕組みへと創り上げていく必要がある。このため、改めてコミュニティ・スクールの意義や成果、課題等を検証した上で、制度面の改善や財政面の措置も含めた方策について審議した。

2.コミュニティ・スクールの現状等
(1)コミュニティ・スクールの現状と成果
 平成27年4月現在、全国2,389校(全国5道県235市区町村の教育委員会)がコミュニティ・スクールに指定されており、幼稚園95園、小学校1,564校、中学校707校、高等学校13校、特別支援学校10校と、小・中学校を中心に指定校の数は増加してきている。
 平成27年度に実施したコミュニティ・スクールの実態に関する調査(以下「27年度調査」という。)によると、コミュニティ・スクールに指定した理由(12)(教育委員会が回答)として、「学校を中心としたコミュニティづくりに有効だと考えたから」「学校支援活動の活性化に有効と考えたから」「学校改善に有効と考えたから」といったことが挙げられている。
 また、同調査によると、コミュニティ・スクールに指定された学校(校長(幼稚園の場合は園長。以下同じ。)が回答)の成果(13)として、「学校と地域が情報を共有するようになった」「地域が学校に協力的になった」「特色ある学校づくりが進んだ」といった認識が明らかとなっている。
 さらに、同調査によると、地域との連携により学校運営の改善が図られる中で、教職員の意識改革や、学力や学習意欲の向上、生徒指導上の課題の解決等の成果認識があるほか、学校を核とした協働活動が行われることに伴って、地域の教育力の向上や地域の活性化等の成果認識も明らかとなっている。
 同様に、教育委員会に対しても、コミュニティ・スクールの導入による成果を調査したところ、おおむね同様の項目において、成果認識が高いことが明らかとなっている。

(12)コミュニティ・スクールを指定した理由として、回答数の多かった上位7項目を以下に記載。
「学校を中心としたコミュニティづくりに有効だと考えたから」「学校支援活動の活性化に有効と考えたから」「学校改善に有効と考えたから」「教職員の意識改革に有効と考えたから」「学校評価の充実に有効と考えたから」「教育課程の改善・充実に有効と考えたから」「生徒指導上の課題解決に有効だと考えたから」
(13)以下、成果認識が7割を超えるものについて割合の高い順に記載。
「学校と地域が情報を共有するようになった」(91.4%)「地域が学校に協力的になった」(85.1%)「特色ある学校づくりが進んだ」(82.7%)「学校関係者評価が効果的に行えるようになった」(79.5%)「地域と連携した取組が組織的に行えるようになった」(79.3%)「子供の安全・安心な環境が確保された」(79.2%)「管理職の異動があっても継続的な学校運営がなされている」(79.1%)「学校が活性化した」(76.5%)「保護者・地域による学校支援活動が活発になった」(74.4%)「学校に対する保護者や地域の理解が深まった」(73.6%)「校長のリーダーシップが向上した」(70.7%)


(2)コミュニティ・スクールの課題
 コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題として、平成23年度に実施したコミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査(以下「23年度調査」という。)によると、指定校(校長が回答)において、「学校運営協議会に対する一般教員の関心が低い」「管理職や担当教職員の勤務負担が大きい」「委員謝礼や活動費などの資金が十分でない」といった認識(14)が示されている。
 また、27年度調査によると、コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない主な理由(15)として「学校評議員制度や類似制度があるから」「すでに保護者や地域の意見が反映されているから」といったことが挙げられている。
 このほか、少数であるものの、「管理職や教職員の負担が大きくなる」「学校運営協議会委員の人材がいない」「任命権者の人事権が制約される」「特定の委員の発言で学校運営が混乱する」といった理由が挙げられている。
 なお、コミュニティ・スクールに対する課題認識について、平成25年度に実施したコミュニティ・スクールに関する調査(以下「25年度調査」という。)において、指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ、課題認識の多くは、指定によって大きく解消される傾向が見られる。
 制度面の改善や財政面の措置も含めた方策の検討に当たっては、こうした課題認識も踏まえた検討を進めていく必要がある。

(14)以下、課題認識が5割を超えるものについて割合の高い順に記載。
「学校運営協議会に対する一般教員の関心が低い」(59.1%)「学校運営協議会の存在や活動が保護者・地域にあまり知られていない」(57.5%)「会議の日程調整・準備に苦労する」(54.8%)「管理職や担当教職員の勤務負担が大きい」(52.4%)「委員謝礼や活動費などの資金が十分でない」(51.7%)「適切な委員の確保・選定に苦労する」(51.3%)15 コミュニティ・スクールを導入していない主な理由として、「学校評議員制度や類似制度があるから」「地域連携が
うまく行われているから」「すでに保護者や地域の意見が反映されているから」「コミュニティ・スクールの成果が明確でないから」「学校支援地域本部等が設置されているから」といった不要感が上位に挙げられる。
(15)コミュニティ・スクールを導入していない主な理由として、「学校評議員制度や類似制度があるから」「地域連携がうまくくおこなわれているから」「既に保護者や地域の意見が反映されているから」「コミュニティ・スクールの成果が明確でないから」「学校支援地域本部等が設置されているから」といった不要感が上位に挙げられる。


第2節 これからのコミュニティ・スクールの仕組みの在り方
【ポイント】

◆コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会制度の基本的方向性
 ○学校運営協議会の目的として、学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを進めていく役割を明確化する必要。
 ○現行の学校運営協議会の機能は引き続き備えることとした上で、教職員の任用に関する意見に関しては、柔軟な運用を確保する仕組みを検討。
 ○学校運営協議会において、地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い、学校とこれらの人々との連携・協力を促進していく仕組みとする必要。
 ○校長のリーダーシップの発揮の観点から、学校運営協議会委員の任命において、校長の意見を反映する仕組みとする必要。
 ○小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資するため、複数校について一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとする必要。
◆制度的位置付けに関する検討
 ○学校が抱える複雑化・困難化した課題を解決し、子供たちの生きる力を育むためには、地域住民や保護者等の参画を得た学校運営が求められており、コミュニティ・スクールの仕組みの導入により、地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立される。
 ○このため、全ての公立学校がコミュニティ・スクールを目指すべきであり、学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策が必要。その際、基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志による設置が望ましいこと等を勘案しつつ、教育委員会が、積極的にコミュニティ・スクールの推進に努めていくよう制度的位置付けを検討。


1.コミュニティ・スクールの仕組みの基本的方向性
(1)コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会の役割と現行の機能の取扱いコミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会は、校長の作成する学校運営に関する基本的な方針の承認等を通じ、校長のビジョンを共有し賛同するとともに、地域が学校と一定の責任感・責任意識を分かち合い、共に行動する体制を構築するものである。すなわち、学校と地域がビジョンや課題、情報等を共有し、熟議し、意思を形成する場であり、学校と地域が相互に連携・協働していくための基盤となる。
 学校運営協議会制度を導入していない教育委員会や学校の課題認識として、地域連携がうまく行われている、既に地域住民や保護者等の意見が反映されているといった認識があるが、学校運営協議会制度を導入することによって、学校において、地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立され、その基盤が確固たるものとなる。
 一方、現行の地教行法における学校運営協議会制度は、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に地域住民や保護者等の意向を的確かつ機動的に反映させることで、学校の管理運営の改善を図るというガバナンス強化を目的として導入されたものであることから、ややもすれば、学校が地域住民や保護者等の批判の的となるのではないかといった印象を持たれてしまうことがある。同制度は、各学校の運営に地域住民や保護者等が参画することを通じて、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待されるものであり、そうした理念の適切な浸透を図っていく必要がある。
 このため、学校が抱える課題の解決を図り、子供たちに対する教育活動等を一層充実していく観点から、学校運営協議会制度について、これまでの役割を重視しつつ、学校運営の最終責任者である校長を支え、学校を応援することで、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進するという役割を明確化していく必要がある。

 次に、現行制度上の機能の意義や課題等について、以下に整理する。

①校長の作成する学校運営に関する基本方針の承認
 現行制度において、指定学校(16)の校長は、当該指定学校の運営に関する基本的な方針(以下「学校運営に関する基本方針」という。)を作成し、学校運営協議会の承認を得なければならないとされている(地教行法第47条の5第3項)。
 これは、学校運営協議会が、校長と共に学校運営に責任を負っているという自覚と意識を高めるとともに、校長が作成する学校運営に関する基本方針に地域住民や保護者等の意向を反映させることを目的としたものである(17)。学校運営に関する基本方針の承認を通じ、育てたい子供像や目指す学校像等のビジョンを共有した上で、協働して教育の充実に取り組む目的意識や当事者意識の向上、役割の分担につながることから、重要な意義を持つものとして認識されている。
 具体的には、27年度調査において、学校運営協議会の機能の意義に関して調査(校長が回答、指定・未指定問わず)したところ、承認の意義としては、「学校・家庭・地域で目指す子供像・学校像を共有するため」との回答が最も多く、「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」「保護者・地域住民の学校理解を得るため」「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」といった回答が続いている。
 一方、未指定の教育委員会や校長からは、学校の自律性が損なわれるのではないかといった指摘がある。これについては、指定学校の校長は、承認された学校運営に関する基本方針に沿い、その権限と責任において教育課程の編成等の具体的な学校運営を行うことが求められるものの、個々の具体的な権限の行使の在り方や内容について、学校運営協議会の指示や承認を受けるものではなく、校長の学校運営の権限が制約されたり代替されたりするものではない。(校長のリーダーシップの発揮の観点については本節1(4)に記載)

(16)学校運営協議会がその運営に関して協議する学校として、教育委員会が指定する学校をいう(地教行法第47条の5第1項)。
(17)「今後の学校の管理運営の在り方について」(平成16年3月4日中央教育審議会答申)参照

②学校運営に関する教育委員会又は校長に対する意見
 現行制度において、学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項(教職員の任用に関する事項を除く。)について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができるとされている(地教行法第47条の5第4項)。
 これは、学校運営協議会が、学校運営に関して協議する機関として設置されるものであることから、学校運営に関する基本方針の承認にとどまらず、当該学校の運営全般について、広く地域住民や保護者等の意向を反映させる観点から意見を申し出ることができる旨を規定したものである。学校運営に関する意見を通じ、地域住民や保護者等と共に考え行動することで、学校運営の改善につながるなどの意義がある(18)。

(18)前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると、教育委員会に対する意見の意義としては、「学校の教育課題の解決を図るため」との回答が最も多く、「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」との回答が続いている。また、校長に対する意見の意義としては、「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」との回答が最も多く、「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」「学校運営の点検と見直しを図るため」「学校の教育課題の解決を図るため」といった回答が続いている。
 さらに、同調査によると、学校運営協議会の意見によって実現した具体的事項として、「地域人材が活用されるようになった」との回答が最も多く、「生徒指導の創意工夫が図られた」「施設・設備の整備が図られた」「学習指導の創意工夫が図られた」「新たな教育活動の時間が生まれた」といった回答が続いている。


③教職員の任用に関する教育委員会に対する意見
 現行制度において、学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、任命権者に対して意見を述べることができるとされている(地教行法第47条の5第5項)。
 これは、学校運営に関する基本方針を踏まえて実現しようとする教育目標・内容等に適った教職員の配置を求める観点から、教職員の任用に関しても意見を申し出ることができる旨を規定したものである。教職員の任用に関する意見を通じ、学校の抱える課題の解決や教育の充実のために必要な校内体制の整備・充実が図られるなどの意義がある(19)。

(19)前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると、教職員の任用に関する意見の意義としては、「教職員体制を改善するため」との回答が最も多く、「教職員の意識改革を進めるため」といった回答が続いている。


 また、25年度調査によると、実際に教職員の任用について意見が出された学校の割合は、指定校の約16%であり、意見の内容としては、教職員人事に関する一般的要望が約64%を占めている。
 一方、未指定の教育委員会や校長からは、任用に関する意見の申出で人事が混乱するのではないか、学校運営協議会と都道府県教育委員会、市町村教育委員会、校長の権限関係が曖昧であり不安であるといった指摘がある。
 これについて、法律上、教職員の任用に関する意見については、任命権者に対し、学校運営協議会から指定学校の職員の任用について意見が述べられた場合、当該職員の任用に当たり、意見を尊重する旨の規定があり、任命権者は学校運営協議会の意見を尊重し、その内容を実現するよう努める必要があるが、これによって、任命権者の任命権(地教行法第37条)の行使そのものを拘束するものではなく、任命権者は、市町村教育委員会の内申(20)や人事評価(21)の結果等を総合的に勘案し、職員の任用を行うこととなる。また、学校運営協議会が設置された場合であっても、市町村教育委員会の内申権(地教行法第38条)、校長の意見具申権(22)(地教行法第39条)そのものに変更が生ずるものではない。さらに、採用その他の任用に関する事項とは、採用、昇任、転任であり、分限(免職、休職、降任、降級)、懲戒(免職、停職、減給、戒告)、勤務条件(給与、勤務時間の決定)等は意見の対象とならないものとされている。
 実際に、25年度調査において、指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ、「任用の意見の申し出で人事が混乱しないか」といった課題意識について、指定前に約23%であった割合が、指定後には約1%に低減しており、指定により課題は大きく解消される傾向にある。
 このため、改めて、国は教育委員会等に対し、学校運営協議会の権限についての正確な解釈も含めた周知徹底を図るとともに、校長が自身の学校の教育目標等の達成のために有効に生かしていくことができるよう、その意義や成果等について理解を促していくことが求められる。一方、依然として教職員の任用に関する意見に対する抵抗感が強く、学校運営協議会の設置の足かせとなっている実態も存在することから、教職員の任用に関する意見については、柔軟な仕組みの在り方を求める声が強いことにも配慮する必要がある。

(20)県費負担教職員については、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の内申をまって、任免その他の進退を行うものとされている(地教行法第38条)。
(21)平成26年6月に地方公務員法が改正され、人事評価制度が導入される予定であり(平成28年4月施行予定)、改正後の同法第23条では、人事評価制度を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とする旨が規定されている。
(22)当該教職員が在籍する学校の校長は、所属の職員の任免その他の進退に関する意見を当該市町村の教育委員会に申し出ることができることとされている(地教行法第39条)。


(現行の機能の取扱いの方向性)
 現行の学校運営協議会制度は、地域とともにある学校の理念を実現させるための有効な仕組みであり、地域住民や保護者等が学校の運営に真に参画し、協働することを保障するために、少なくとも同協議会が備えるべきとされた機能が現行の地教行法に規定されている三つの機能である。現行制度が有する意義や成果等を踏まえると、学校運営協議会は、法律上の機能である「学校運営に関する基本方針の承認」、「学校運営に関する意見」及び「教職員の任用に関する意見」の三つの機能を備えるべきである。その上で、教職員の任用に関する意見については、これまでの心理的抵抗を払拭し、学校運営協議会制度を新たに導入しようとする積極的な検討を促す観点から、柔軟な運用を確保する仕組みとしていくことも検討すべきである。

(2)学校支援の総合的な企画・立案、連携・協力の促進の観点
 現行制度において学校運営協議会が有する機能は、前述のとおり、学校のガバナンス強化のための機能となっているが、学校・家庭・地域の信頼関係や協力関係を築いていくことが、学校運営協議会の取組を充実していく鍵である。
 23年度調査によると、学校運営協議会で学校支援活動を実施している学校では、学校の活性化や学校関係者評価の効果的な実施等の「学校運営の改善」、児童生徒の学習意欲の向上や生徒指導上の課題解決等の「児童生徒の変容」、教職員の意識改革や教職員の子供と向き合う時間の増加等の「教職員の変容」、学校に対する保護者や地域の理解の深まりや保護者・地域からの苦情の減少等の「保護者・地域連携の変容」、家庭や地域の教育力の向上等の「学校外の変容」といった様々な面で成果認識が有意に出ている。
 また、27年度調査によると、指定学校(校長が回答)において、学校運営協議会が学校支援に関わることによる成果(23)として、「より特色ある学校づくりを展開することができた」「学校運営協議会の意見等によって学校のニーズにより的確に対応した支援を受けた」「より持続可能な学校支援活動を受けることができた」といった認識も具体的に明らかとなっている。
 学校が抱える課題の解決を図り、子供たちの教育活動等を一層充実していく観点から、地域住民や保護者等による学校の教育活動等を支援する機能は欠かせないものとなっており、学校運営協議会の機能として支援機能を位置付けている割合は約68%と、実態からも支援機能の必要性が整理できる(24)。
 このように、学校運営協議会において学校運営の方向を協議し支援につなげるという構造を取ることで、学校運営に関する基本方針を踏まえた教育支援活動が展開できる、学校・家庭・地域が課題や情報等を共有することで地域住民や保護者等による学校支援が活性化されるなどの意義がある。承認した学校運営に関する基本方針の達成に向かって、地域全体で共に前進し行動していくことは、当事者意識等の向上につながり、学校はより良く発展していく。
 こうした意義や成果等を踏まえ、学校運営協議会が法律上有している役割の重要性を押さえた上で、学校の総合力を高め、一層活性化させていくためには、学校運営協議会が、学校に対する地域住民や保護者等の理解や協力、参画を促し、学校を支える基盤であるという観点を明確化していくことが必要である。このため、学校運営協議会において、地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い、学校とこれらの人々との連携・協力を促進していく仕組みとしていく必要がある。また、このような役割を学校運営協議会が果たす上では、第3章で示す統括的なコーディネーターや地域コーディネーター等を委員として位置付けていくことが求められる。
 この際、こうした仕組みを検討するに当たっては、当該機能がトップ・ダウン型で一方的に展開されることなく、地域住民や保護者等と教職員とが協働で企画したり活動を実施したりするなど、学校と地域で連携・協働した活動が展開されるよう配慮することが必要であるとともに、子供の学びを中心に据えた協働的な活動を通じ、地域づくりに発展していく取組を推進していく視点も有効であり、第3章で示す「地域学校協働本部」との一体的・効果的な推進にも留意する必要がある。

(23)以下、成果認識が7割を超えるものについて割合の高い順に記載。
「学校運営協議会の意見等によって学校のニーズにより的確に対応した支援を受けた」(83.3%)「より持続可能な学校支援活動を受けることができた」(87.3%)
「より特色ある学校づくりを展開することができた」(86.5%)
「より組織的かつ計画的に学校支援活動を受けることができた」(84.5%)
「学校支援活動が活性化した」(82.8%)
「学校支援組織の人材を確保しやすくなった」(82.4%)
「学校運営協議会の活動自体が活性化した」(78.8%)
「学校運営のより確実なPDCAサイクルの確立につながった」(78.3%)
「学校運営協議会の意見等によって、保護者・地域のニーズにより的確に対応した支援を受けた」(77.6%)
「保護者や地域住民等の学校運営への参画の機運が高まった」(74.8%)
「学校支援ボランティア等が教育目標などを共有することによって保護者・地域の当事者意識が高まった」(74%)
(24)ある教育委員会では、学校運営協議会に、協議する機能に加え、学校教育を支援する機能を持たせた上で、承認した教育目標の実現に向けて、学校、家庭、地域、そして子供たち自身が熟議を行い、それぞれの立場でできることを具体的に示した行動指針(パワーアップアクションプラン)を策定しており、各々の組織・場で主体的な取組を実践することで、より質の高い学校教育の実現につながっている。


(3)学校評価との一体的な推進の観点
 現状としては、各学校や地域の実情等に応じて、学校運営協議会の機能として学校評価の機能を位置付けている割合が約78%に至っている状況であり、学校関係者評価委員を学校運営協議会の委員が兼務し、学校運営協議会の機能の一つとして学校関係者評価を実施している、学校運営協議会で評価結果と併せて、改善に向けた支援策を協議し実施しているなどの実態が見られる。
 学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することで、成果や課題の共有、取組の改善に生かし、学校運営の評価・改善サイクルが充実していくなどの意義がある。また、学校運営協議会において学校評価を行うことで、「様々な課題が共有され、そのための具体的な対策を協議会で協議し、具体的な改善にもつながっている」「次年度の学校運営の基本方針等に着実に生かされており、学校運営協議会委員の参画意識の向上につながっている」といった成果も指摘されている。
 学校関係者評価の質を高め、より実効性を高める観点から、また、学校運営協議会の設置の促進の観点からも、既にある学校関係者評価委員会を基盤に学校運営協議会制度を導入していくことが有効であることから、学校教育法体系上位置付けられている学校関係者評価について、学校運営協議会と有機的に組み合わせ、両者を一体的に運用していくことを積極的に推進することが重要である。その際、教育委員会規則において、学校評価の部会等を設置できる規定を盛り込むなどにより、学校運営協議会の機能として、効果的な学校評価を実施していくことが有効である。
 一方、学校運営協議会が形骸化しないためには、実効性ある運営と併せ、学校運営協議会の取組そのものも適正に評価される必要があることから、教育委員会における定期的な点検・評価の実施を一層推進していくことが必要である。その際、教育委員会にとどまらず、第三者も含めた点検・評価を実施することも有効である。

(4)校長のリーダーシップの発揮の観点
 学校における一切の事柄の責任と権限は、最終的には教育委員会が有するものであるが、日常的な学校運営は、校長の責任と権限に基づいて処理される(25)。
 未指定の教育委員会や校長からは、現行の学校運営協議会制度において、校長と学校運営協議会の委員が対立しないか、特定委員の発言で学校運営が混乱するのではないかという不安感を抱く声があるが、前述のとおり、学校運営協議会が設置された場合であっても、学校運営の責任者として教育活動等を実施する権限と責任は校長が有するものであり、学校運営協議会が校長に替わり学校運営を決定、実施する権限を持つものではない。
 大切なのは、校長が、学校運営協議会の委員に対し、子供たちをどのような方針で育てていくのかというビジョンを示し、意識や取組の方向性の共有を図ることであり、学校運営協議会は、学校運営に関する基本方針の下、校長と共に責任感を持って行動する体制を構築していくことが重要である。
 複雑化・多様化した課題を抱える学校の運営を改善し、学校の教育力を向上させていくためには、校長のリーダーシップが一層発揮される環境を整備するとともに、学校運営協議会の委員として、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、学校をより良いものにしていくという当事者意識と意欲を持ち、学校と共に行動していける人材を確保していく必要がある。
 多くの教育委員会においては、学校運営協議会の委員の任命に際し、校長の推薦を得たり意見を聴取するなどの工夫をしている状況も踏まえ、校長のリーダーシップの発揮の観点から、学校運営協議会の委員の任命において、校長の意見を反映する仕組みとしていく必要がある。なお、校長のリーダーシップの発揮の観点からも、本節1(2)の学校支援の総合的な企画・立案等を行える仕組みとしていくことが望ましい。

(25)学校教育法第37条第4項において、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」ものとされている。


(5)小中一貫教育への対応など学校間連携の推進の観点
 地域ぐるみで子供たちの義務教育9年間の学びを支える仕組みとして、中学校区の複数の学校が連携した教育支援体制を構築することは重要であり、小中一貫教育とコミュニティ・スクールを有機的に組み合わせて大きな成果を上げている例も見られる。これらの一体的な導入により、地域住民や保護者等と教職員とが、学校の教育目標や、学校・子供たちが抱える課題やその解決策等について9年間を見通して共有し、より広い地域からの組織的・継続的な学校支援体制を整えることが可能となる。特に、小中一貫教育をこれから導入しようという地域においては、導入前から関係の小学校・中学校について学校運営協議会を合同で設置し、学区の地域住民や保護者等の意向を反映させながら、新たなカリキュラムや学校施設の在り方等を具体的に構想していく工夫も考えられる。
 また、今後制度化される小中一貫型小学校・中学校(仮称)においては、一貫教育の実質を適切に担保する観点から、学校間の意思決定の調整システムを整備することが要件として定められる予定であるが、具体的なシステムとしては、学校間の総合調整を担う校長を定めることや、あるいは、一体的なマネジメントを可能とする観点から小学校・中学校の校長を併任させることに加え、学校運営協議会を合同で設置し、一体的な教育課程の編成等の学校運営に関する基本方針を承認する手続を明確にしておくこと等が想定されている。
 小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施するためには、中学校区で一つの学校運営協議会を置くことが有効であるが、現行の地教行法では学校運営協議会は学校ごとに置くこととなっている(地教行法第47 条の5第1項)ことから、学校ごとに学校運営に関する基本方針を別々に承認することとなり、9年間を通じた方針・目標等の共有がしにくいという課題がある。このため、小・中学校の学校運営協議会をリンクさせるために、学校運営協議会の委員全員を関係する全ての学校の委員として併任させたり、各学校について協議会を置いた上で、更にその上に小中合同の会議を開催したりするなどの工夫を講じる例もあるが、委員や学校の大きな負担につながっている。
 一方、27年度調査によると、複数校について一つの学校運営協議会を設置できるようにすることを希望(校長が回答、指定・未指定問わず)する割合は約64%に上る。
 このため、小中一貫教育の取組を一層充実する上でも、中学校区内の複数の小・中学校について一体的な学校運営協議会の設置を促進することが有効であり、学校運営協議会を学校ごとに設置することを基本としつつ、小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資する観点から、複数校について一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとしていく必要がある。
 この際、9年間一貫した教育目標や教育課程等の学校運営に関する基本方針の承認のほか、地域住民や保護者等の意向を踏まえた、小中一貫教育の軸となる独自教科の検討、9年間で一貫した学校運営に対する意見の聴取、9年間を通じた学校支援や学校関係者評価の実施など、そのメリットを最大限生かした運営がなされるとともに、負担軽減策も含め、より効果的かつ効率的な運営がなされるよう配慮していくことが求められる。また、小中一貫教育以外にも、幼稚園も含めた中学校区全体の連携、中高一貫教育など、多様な学校間の教育の接続・連携にも配慮することが求められる。

2.コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討
 教育再生実行会議が平成27年3月に取りまとめた第六次提言「「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」において、教育がエンジンとなって地方創生を成し遂げる必要があるという理念の下、学校は、人と人をつなぎ、様々な課題へ対応し、まちづくりの拠点としての役割が求められるとの観点から、「全ての学校において地域住民や保護者等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール化を図り、地域との連携・協働体制を構築し、学校を核とした地域づくり(スクール・コミュニティ)への発展を目指すことが重要」であると提言された。また、そのために、「国は、コミュニティ・スクールの取組が遅れている地域の存在を解消し、一層の拡大を加速する。このための制度面の改善や財政面の措置も含め、未導入地域における取組の拡充や、学校支援地域本部等との一体的な推進に向けた支援等に努める。そして、全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働した活動を展開するための抜本的な方策を講じるとともに、コミュニティ・スクールの仕組みの必置について検討を進める」ことが提言された。
 このことを受け、本審議会では、学校運営協議会制度の基本的方向性を踏まえた上で、コミュニティ・スクールの仕組みの必置について多様な観点から審議した。

(1)学校や地域の状況
 現在、学校と地域の連携・協働体制の一環として、法律に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールのほかにも、学校評議員をはじめ、地域による学校運営への関わり方には様々な形がある中、類似の仕組みを導入することによるコミュニティ・スクールへの不要感を指摘する声がある。
 学校評議員については、平成24年3月現在で公立学校は80.2%の設置率となっており、校長の求めに応じ、学校運営に関し、地域住民や保護者等の意向を把握し反映することができる仕組みであるが、実質的な制度の形骸化等(26)について指摘がある。25年度調査によると、調査に回答した半数以上の学校の校長は学校評議員制度が形骸化していると認識している。
 また、27年度調査によると、学校運営協議会の設置に伴い、学校評議員又は類似制度を廃止又は停止している学校の割合は約77%という状況であり、そのうち、「学校評議員を学校運営協議会委員とし、さらに新たな人材も委員に加えた」が約50%、「学校評議員のうち一部を学校運営協議会委員に移行させた」が約29%という状況である。
 同調査によると、「学校運営協議会の設置によって、学校支援活動や学校評価などの活動が積極的に展開できている」との回答が約67%、「学校運営協議会委員は学校評議員等よりも当事者意識が高い」との回答が約62%、「学校運営協議会は学校評議員等よりも活発に意見を出してくれる」との回答が約60%という状況である。
 一方、中には、○○型コミュニティ・スクールといった名称で、法律に基づかないものの、独自に学校運営協議会類似の仕組みを取り入れ、地域住民や保護者等が活発に学校運営に参画している地域もある。そうした地域においては、学校と地域の連携・協働関係、信頼関係の土台ができている面もあり、教育長・校長の声として、類似の仕組みも含めた多様なコミュニティ・スクールの在り方を求める声もある。
 前述のとおり、学校運営協議会は、育てたい子供像、目指すべき教育のビジョンを地域住民や保護者等と共有し、目標の実現に向けて共に協働していく仕組みであり、類似の仕組みから法律に基づく学校運営協議会に発展することで、学校において地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立されるという魅力・メリットが存在する。学校と地域の連携・協働体制を一時的なものとせず、持続可能な仕組みとして発展・充実していく上で、学校運営協議会制度の意義は大きい。また、学校と地域において共通したビジョンを持った取組の展開が可能となる、学校運営に関する基本方針の承認を通じて、地域住民や保護者等に対する説明責任の意識が向上するとともに、地域住民や保護者等の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となるといった魅力・メリットもある。
 このため、国は、学校評議員制度からコミュニティ・スクールへの移行を積極的に促すとともに、○○型コミュニティ・スクールなど、学校運営協議会制度によらずに地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みを構築している取組(27)についても、コミュニティ・スクールへの過渡的な段階の姿(コミュニティ・スクール化)として捉え、コミュニティ・スクールへの移行を促進していくことが重要である。なお、新たに学校運営協議会を置く場合には、教育委員会の判断により学校評議員を廃止又は活動を停止するなど、それぞれの学校の実情に応じて、効率的・効果的な活用を図ることが重要である ことを併せて示していく必要がある。

(26)学校評議員の実質的な形骸化については、「会合開催数が少なく、学校評議員が学校の実態を十分に把握しておらず、議論が活発化しない」「地域の名誉職が評議員となるため、地域のご意見番という性格が強く、組織的ではなく個人的な動きになりやすい」「建設的な意見がなく、形式的で学校が一方的に報告する会議となっている」「様々な助言はもらえるものの、課題解決のアクションを起こすのが学校だけではオーバーワークで機能しない」といった指摘がある(「コミュ
ニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりの一層の推進に向けて」(平成27年3月 コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議)参照)。
(27)地域の人々や保護者等が学校運営や教育活動について協議し意見を述べる会議体※を設置している取組を指す。
※教育委員会の規則や教育委員会の方針等に基づき学校が作成する要綱等により設置されている会議体で、校長の求めに応じた意見聴取にとどまらず、主体的に学校運営や教育活動について協議し、意見を述べることができる会議体(任用等に関する意見を主活動として位置づけていない協議会も含む)。
例えば、学校評議員の発展型として協議会を設置し、学校運営全般に参画しているものや、学校支援等の取組の発展型として協議会を設置し、学校支援にとどまらず、学校運営全般にも参画しているもの、学校関係者評価委員会の発展型として、評価にとどまらず、学校運営全般にも参画しているものなども考えられる。


(2)市町村や学校の規模との関係
 27年度調査によると、コミュニティ・スクールの指定を行っていない理由について、自治体の規模別に見ると、小規模の自治体においては、「地域連携がうまく行われている」、「すでに保護者や地域の意見が反映されている」といった回答のほか、「学校運営協議会委員の人材がいない」といった回答が有意に高い状況であった。本調査からも分かるように、小規模の自治体では学校運営協議会の委員の確保が難しい側面があり、また、小中一貫教育以外の学校間連携のネットワークも必要となることが多い。
 また、同調査によると、「学校ごとではなく複数校まとめた学校運営協議会を設置できるようにすることが望ましい」との回答(校長が回答、指定・未指定問わず)について、自治体の規模別に見ると、小規模の自治体であるほど回答が高い傾向がある。また、学校の規模別に見ても、小規模の学校であるほど回答が高い傾向がある。
 こうした実態や、小規模の学校においては多様な教育環境が十分に確保できていない現実があることを踏まえれば、小規模の学校のネットワークをガバナンスの面から支える観点から、複数校について一つの学校運営協議会を設置することは有効である。
 その際、単に小規模だからという物理的な要件のみを設定するのではなく、学校間のネットワーク化を通じて子供たちをどう育てていくかというグランドデザインや、教育課程上の接続を図るなど、異なる学校の間における教育の円滑な接続や連携を図る観点等を要件として設定していくことが求められる。
 なお、小規模の自治体においても、学校運営協議会、教育委員会、学校が適切に連携・協力して運用がなされることにより、各学校の運営の改善にとどまらず、教育行政全体の活性化の面、まちづくりや地域の活性化の面での効果も期待される。
(3)幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方
 本審議会では、幼稚園、高等学校及び特別支援学校の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの在り方についても審議した。
 全国的に見ると、コミュニティ・スクールは小・中学校を中心に増えており、幼稚園は95園、高等学校は13校、特別支援学校は10校とごく一部にとどまるが、子供たちの生きる力は学校だけで育まれるものではなく、地域や社会の多様な人々と関わる中で育まれるものであることは、どの段階においても変わるものではない。地域や社会を支える子供たちを育成していくためにも、学校種の特性を生かしつつ、幼児・児童・生徒の発達段階等に応じて、地域や社会との協働体制を構築していく必要がある。

(幼稚園の特性を踏まえた在り方)
 幼児期に家庭や地域の人々など、様々な人に愛情を持って関わってもらうことが、幼児期の豊かな体験となり、地域への愛着や誇りを持つ基盤となる。子供たちが地域で活躍する活動や場を作ることで、自己肯定感も育つ。
 また、子供たちの健やかな成長のためにも、幼稚園、家庭、地域がそれぞれの役割と責任を自覚し、地域全体で教育に取り組む体制を構築していく必要がある。
 具体的には、学校運営協議会を地域において幼児期から子供の育ちを一体的に考える場としていくことが重要であり、卒園児の保護者や区域の小学校や教育・保育施設の関係者等の協力を得ることで、小学校との円滑な接続や教育・保育施設との円滑な連携の推進等が期待される。

(高等学校の特性を踏まえた在り方)
 高等学校は、全日制・定時制・通信制、普通科・専門学科・総合学科など、様々な課程や学科等があり、それぞれに特有の学校運営の在り方等が存在している。また、義務教育諸学校とは異なり、生徒の選択により入学する学校種であるため、通学区域が広範囲にわたることにも留意する必要があり、広く社会との関わり・連携を深めていく視点が求められる。
 高等学校において広く地域や社会の参画・協力を促進することは、学校運営の改善につながり、キャリア教育の推進や学校の魅力化、特色づくりに資するものである。具体的には、これまで培われた地域や社会との関係を生かして、学校運営協議会を通じ、学校が所在する地域の住民や近隣の大学の教員、地元の商店街、企業、NPO等の団体、地方公共団体等の協力を得ることで、
・地域の差し迫った課題を、高校生自らが地域と協働して解決していく地域課題解決型学習を実施したり、町興しイベント等の企画・実施を通じて地域の活性化を図るなど、高等学校と地域の双方向的な魅力を発信したり、
・これからの企業・社会が求める人材像や資質・能力等について協議したり、
・高等学校の周辺地域の企業等と連携・協力してインターンシップ等を実施したり、
・専門高校等において、地域産業と連携し、職場で実践的な技術研修を実施したり、
 特別非常勤講師等として招へいして授業を実施するなど、
学校の活性化や教育の質の向上に資するとともに、地方創生の観点からも、地域の課題解決・活性化に資することが期待される。
(特別支援学校の特性を踏まえた在り方)
 これからは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である「共生社会」を目指す必要がある。
 このため、障害のある子供が、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立して社会参加することができるよう、医療、保健、福祉、労働等との連携を強化し、社会全体の様々な機能を活用して、十分な教育が受けられるよう、地域住民や保護者等との連携・協働を一層推進し、障害のある子供の教育の充実を図ることが重要である。
 障害者に対する理解を推進することにより、周囲の人々が障害のある人や子供たちと共に学び合い生きる中で、公平性を確保しつつ社会の構成員としての基礎を作っていくことが重要であり、学校と地域が連携・協働しながらこうした環境を醸成していくことは、共生社会の構築につながる。
 具体的には、学校運営協議会を通じて、地域住民や保護者等に加え、医療、保健、福祉等の代表の協力を得ることで、子供たちが自立し社会参加できる環境の充実を図るほか、地元の職業センター等の代表の協力を得て、地場産業への就労を目指す教育課程の工夫や地域の特産品を活用した作業製品の開発・販売を進めること等により、学校の活性化や教育の質の向上、さらには、共生社会の実現に資することが期待される。
 また、センター的機能(28)の役割を果たす特別支援学校が有する資源(教材・教具、施設・設備、特別支援教育に関する相談・情報提供等)の有効な活用を図ることを通じて、地域の活性化に貢献していくことも期待される。

(28)学校教育法第74 条に基づき、特別支援学校は小・中学校等や保護者に対し、障害のある児童生徒等の教育についての助言又は援助を行う。平成17年12月の中央教育審議会答申で示されたセンター的機能の例示は以下のとおり。
 ア 小中学校等の教員への支援機能、イ 特別支援教育に関する相談・情報提供機能、ウ 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能、エ 福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能、オ 小・中学校等の教員に対する研修協力機能、カ 障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能。


(4)小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い
 小規模自治体の場合、学校運営協議会と教育委員会の関係について、両者の機能・権限や委員が重なるのではないかといった課題が指摘されている。
 学校運営協議会は地教行法第47条の5に基づき、学校運営に関する基本方針を承認する機能等を有する。一方、教育委員会は地教行法第21 条に基づき、学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関する管理・執行権限等を有する。
 両者の法律上の機能・権限は異なるものであり、一体として捉えることはできないものであるが、教育委員には、単に一般的な識見があるというだけではなく、教育に対する深い関心や熱意が求められることから、例えば、PTAや地域の関係者、学校運営協議会の委員等を選任することは有効である。
(5)これからの学校運営協議会の制度的位置付けの検討
 学校運営協議会については、公立学校を設置・管理する権限を有する地方公共団体の教育委員会において、学校や地域の実態等を十分に踏まえて、学校ごとに判断されることが望ましいとされ、現行制度上、任意設置とされている(地教行法第47条の5第1項)。
 本審議会では、現在の学校や子供たちが抱える課題等を解決し、学校が組織としての力を発揮していくために、全ての学校が、地域とともにある学校としてコミュニティ・スクール化を図り、学校と地域の連携・協働体制を構築していくことを目指すべきとの視点に立ちながら、コミュニティ・スクールの仕組みの必置に係る検討の一環として、学校運営協議会の制度的位置付けについて審議を行った。
 学校運営協議会の制度的位置付けの見直しを求める意見としては、以下のような意見が挙げられる。
 ・学校運営協議会は学校と地域に様々なポジティブな影響を与える可能性があることから、仕組みを必置とすることが望ましい。
 ・徹底した理解を図り、人の配置や予算面での支援等により誘導を図っていくことで、必置ということも無理ではない。
 ・全ての学校をコミュニティ・スクールとするならば、既存の様々な取組を制度に位置付けることで、停滞しがちな面もある既存の取組を安定させ、持続可能な取組としていけるといった面をアピールしていく必要がある。
 ・地方創生の実現の観点からも、開かれた学校にとどまるのではなく、地域とともにある学校に転換する必要があり、責任を持って地域が学校運営に参画していく仕組みとして、学校運営協議会を必置として考えていく必要がある。
 ・人口減少が加速している中、学校を核にするならば、コミュニティ・スクールは必然である。類似の仕組みにとどまることなく、法令に基づいて設置される学校運営協議会に一定の権限と責任を担保させることが重要である。

 一方、学校や地域の実情を踏まえた在り方を求める意見としては、以下のような意見が挙げられる。
 ・実態に合った取組ができるよう段階的仕組みとすべきである。
 ・小・中学校は地域との関連性が深いことから必置とすることが望ましいが、それ以外の学校種は通学区域が広域で一律必置は難しく、取組を検証しながら導入を促進していくことが望ましい。
 ・全ての学校にコミュニティ・スクールの仕組みを取り入れるのであれば、そのハードルを下げていかなければならないし、難しい仕組みにしてはいけない。
 ・今の学校運営協議会の仕組みを必置として押しつけることは得策でない。
 ・全校をコミュニティ・スクールとするにしても、トップ・ダウンで一気に進めていくのではなく、各自治体にモデル校を指定し、成功体験を積ませた上でモデルケース化していくような、地域の納得を得られた形で制度を広げていく方法もある。

 また、本審議会では、教育委員会・教育長関係団体や校長・園長会からも意見聴取を行った。意見の多くは、これからの学校運営に当たっては、地域との連携・協働は不可欠であり、学校・地域の連携・協働を推進する手段として、コミュニティ・スクールの仕組みの意義や推進は必要であると認識しつつも、一律に導入を促すのではなく、学校や地域の実情等を踏まえた柔軟な在り方が望ましいといったものである。以下、主な意見を挙げる。
 ・法定の学校運営協議会を設置していなくとも、類似の取組を行うなど、実質的に同等の活動を展開し地域との連携を図っている学校も少なからずある。こうした中、全ての学校に現行の学校運営協議会を必置とすることは実現が困難であると考える。このため、顕在化している課題にしっかりと対応した情報発信の改革と支援措置の拡充を図るとともに、学校や地域の実情に応じて一部の機能のみを有する学校運営協議会を置くことができることとするなど、弾力的な制度設計とすべきである。
 ・学校評議員、学校支援地域本部、学校関係者評価等の様々な仕組みに、更に学校運営協議会も設置することにより学校の負担となることは避けるべきである。全国的にコミュニティ・スクールを推進するに当たっては、実態に合った取組ができるよう段階的仕組みとすべきであり、財政確保と人材確保の保障が必要である。
 ・地域とともにある学校を目指すために学校運営協議会を導入していく方向性は妥当である。一方、全国的に広めていくためには、地域性を考慮の上、柔軟な形態と多様性を認め、拙速な実施にならないよう配慮するとともに、国として予算的な裏付けを継続的に保障すべきである。

(これからの学校運営協議会の制度的位置付け)
 これまで述べてきたとおり、現在、学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中、困難な課題を解決し、子供たちの生きる力を育んでいくためには、地域住民や保護者等の参画を得て、力を合わせて学校運営を行っていくことが求められており、第1章で述べた社会の動向や子供たちの教育環境を取り巻く状況等を踏まえればなおさら、その必要性は増している。学校運営協議会制度を導入することで、学校・家庭・地域が育てたい子供像や目指す学校像を共有し、一体となって子供たちを育み、課題の解決に取り組むことが可能となる。また、本制度の導入によって、学校運営の改善をはじめ、児童生徒、教職員、地域住民や保護者等にプラスの変容が見られるなど、様々な面で成果が示されており、何より、学校と地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立されるという点で大きな意義を持つ。
 このような観点を踏まえれば、これからの公立学校は地域とともにある学校へと転換し、地域との連携・協働体制を持続可能なものとしていくことが不可欠であり、今後、全ての公立学校において、地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして、学校運営協議会制度を導入した学校(コミュニティ・スクール)を目指すべきである。
 このため、各教育委員会が、コミュニティ・スクールの推進を図っていくよう、現在任意設置となっている学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策を講じていくことが必要である。その際、
 ・学校運営協議会を有効に機能させるためには、学校と地域の信頼関係の構築が基盤となることから、基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志によって設置されることが望ましいこと、
 ・現在の学校運営協議会の設置率は全公立学校の7%程度という実態を踏まえる必要があること、
 ・学校運営協議会が学校運営に混乱をもたらしかねないといった懸念・不安に基づく制度導入に対する拒否反応を丁寧に払拭していく必要があること、
 ・学校や学校を取り巻く地域の状況は多様であることから、過渡的な段階を経た発展も考慮する必要があること
等の点を勘案しつつ、教育委員会が、積極的にコミュニティ・スクールの推進に努めていくような制度的位置付けの見直しを検討すべきである。
 法律に基づかない自治体類似の仕組みについても、コミュニティ・スクールへの過渡的な段階(コミュニティ・スクール化)の姿として捉え推進していくことが重要であり、取組の充実・発展を促す中で、最終的にはコミュニティ・スクールとなることを目指して推進していくことが重要である。
 また、国においては、コミュニティ・スクールがより魅力的な仕組みとなるよう、本節1.に示した基本的方向性の実現を図り、学校や教育委員会の主体性を大切にしながら推進していく必要がある。そのためにも、制度の趣旨や目的をはじめ、学校運営協議会が三つの機能を有するからこそ、学校・家庭・地域の各々が、互いの役割を認識し、相互に連携・協働して学校運営を充実させることにつながり、子供たちの生きる力の育成につながるといった、本制度の持つ意義や成果等に対する正しい理解が得られるよう周知を図るとともに、コミュニティ・スクールを推進するための施策面・財政面等における総合的な推進方策を講じていくべきである。
 この際、コミュニティ・スクールが一層推進されるよう、教育振興基本計画等において、国としての方針を明確化し、それに向けて次節に記述する支援方策の積極的な実施と併せ、各地方公共団体の取組状況をフォローアップし、適切な時期に制度的位置付けや支援方策について検討し、その結果に基づき見直しを行うべきである。

第3節 コミュニティ・スクールの総合的な推進方策
【ポイント】

◆国として、コミュニティ・スクールの一層の推進を図るため、財政的支援を含めた条件整備や質の向上を図るための以下の方策を総合的に講じていく必要。
 ○様々な類似の仕組みを取り込んだコミュニティ・スクールの裾野の拡大
 ○学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化
 ○学校運営協議会の委員となる人材の確保と資質の向上
 ○地域住民や保護者等の多様な主体の参画の促進
 ○コミュニティ・スクールの導入に伴う体制面・財政面の支援等の充実
 ○幅広い普及・啓発の推進
◆都道府県の教育委員会は、都道府県としてのビジョンと推進目標の明確化、知事部局との連携・協働、全県的な推進体制の構築、教職員等の研修機会・内容の充実、都道府県立学校におけるコミュニティ・スクールの推進等を図ることが求められる。
◆市町村の教育委員会は、市町村としてのビジョンと推進目標の明確化、首長部局と連携・協働、コミュニティ・スクール未指定の学校における導入等の推進等を図ることが求められる。


 本審議会では、第2節の制度的な見直しに加え、コミュニティ・スクールの拡大・充実のための総合的な推進方策について審議を重ねた。
 全ての公立学校をコミュニティ・スクールとしていくことは容易ではない。教育委員会や学校が抱いている不要感や不安感、負担感など、様々な課題に対して、真摯に向き合い、解決に向けた働き掛けや支援を行っていくとともに、社会総掛かりでの教育の実現に向けた大きなうねりを巻き起こしていく必要がある。
 なぜコミュニティ・スクールとしていく必要があるのか、どんなメリットがあり、導入によって、子供たちがどう変わっていくのか。教育委員会や学校が動くための糸口は「共感」を得ることであり、関係者が熟議を重ね、コミュニティ・スクールの導入によって、子供たちが変わり、学校が変わっていくという成功体験を積み重ねていくことが重要である。このためにも「地域とともにある学校づくり」のために重視してきた「熟議」、「協働」、「マネジメント」の視点(29)を大切にしていく必要がある。
 コミュニティ・スクールをはじめとした地域とともにある学校づくりに関わる当事者にとって、それぞれの立場から関わる魅力は、以下のように整理することができる。

◆コミュニティ・スクールをはじめとした地域とともにある学校づくりの魅力
(子供にとっての魅力)
 ・学校に多様な人々が関わっていくことで、多くの大人の専門性や地域の力を生かした教育活動等が実施され、学校での学びがより豊かに、広がりをもったものとなり、子供たちの学びが充実する。
 ・信頼できる大人と多くの関わりを持ち、愛情を注がれることにより、自己肯定感や他人を思いやる心など、豊かな心が育まれる。
 ・地域の人々に支えられ学んでいくことで、地域への愛着が芽生え、地域の担い手としての自覚が育まれる。
 ・防災・防犯等の観点からも、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが、子供たちの命や安全を守ることにつながる。
(教職員にとっての魅力)
 ・(特に管理職にとって)学校運営に関する基本方針の承認等を通じ、地域住民や保護者等の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が実現する。
 ・地域住民や保護者等が学校の状況を理解し、賛同してくれているという後押しを得られることで、安心して仕事ができる環境が得られる。
 ・相互理解に努め、共に成功体験を重ねるなど信頼関係を構築していくことで、地域の人々が学校の応援団となってくれている実感が得られる。
 ・地域の人々との交わりで得られる多様な経験を通じ、教員としての意欲が高まり、豊かな指導力の発揮につながる。
 ・教育や子供たちの成長に対する責任を分かち合い、学校がやるべきこと、家庭がやるべきこと、地域がやるべきことの役割分担が図られることで、教職員が子供と向き合う時間の確保につながる。
(保護者にとっての魅力)
 ・学校への関わりを通して学校や地域への理解が深まることで、子供たちが地域の中で育てられているとの安心感が生まれる。
 ・保護者が学校に関わっていくことで、保護者同士のつながりや地域の人々とのつながりが生まれる。
(地域住民にとっての魅力)
 ・学校運営や教育活動等への参画を通じ、子供たちと触れ合い、これまで学び培ってきたことを生かす機会が得られることで、自己有用感や生きがいにつながる。
 ・学校運営や教育活動等への参画を通じ、地域の人々が集うことで、学校が、社会的なつながりが得られる場となり、地域のよりどころとなる。
 ・地域のネットワークが形成されることで、地域づくりの輪が広がっていく。
 ・学校を中心につながった絆は、地域の力を高め、地域の人々に安心と生きがいを与える。
 ・防災・防犯等の観点からも、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが、地域の安全を守ることにつながる。
 ・企業やNPO、大学等が教育活動等に参画することで、その専門性を生かす機会を得ることができるとともに、社会的な信頼の向上につながる。



 コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策として、有効と考えられる方策を以下に示す。国は、これらの推進方策を着実に実行するとともに、各地方公共団体等においても、これらの方策を踏まえた積極的な取組が進むことを期待する。

1.国におけるコミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策
(1)コミュニティ・スクールの裾野の拡大
 コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない理由の多くが、学校評議員制度や類似制度があるから、地域連携がうまく行われているからといったコミュニティ・スクールに対する不要感である。
 学校支援等の取組や学校評議員、学校関係者評価、その他自治体独自の類似の仕組みは、学校と地域の協働関係・信頼関係の土台となる大切な取組である。学校支援等の取組や学校評議員、類似の仕組みを基盤とし、段階的にコミュニティ・スクールに発展していくことで、組織的・継続的な体制が構築され、従来の取組も一層充実していく。また、コミュニティ・スクールの機能として学校評価の機能を位置付け、学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することは、学校運営の評価・改善サイクルの充実につながる。このように、コミュニティ・スクールの推進に当たっては、これまで各学校が培ってきた実践の内容や方法、組織を効果的・効率的に生かす視点が必要である。
 地域独自の取組も含め、類似の仕組みは様々な形式があり、一概に比較することはできないが、類似の仕組みからコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度を導入した学校)に発展することによる主な魅力やメリットは以下のように整理できる。

◆類似の仕組みからコミュニティ・スクールに発展することによる主な魅力やメリット
・事業としての類似の仕組みから、法律に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールに発展することで、学校・家庭・地域の組織的・継続的な連携・協働体制の確立が可能となる(学校の人事異動に左右されない学校教育の実現)
・学校運営の当事者意識を有した委員の意見が得られることで、学校運営の改善・充実が図られる
・学校・家庭・地域において、共通したビジョンをもった取組の展開が可能となり、一方的な支援にとどまらない、主体的・協働的な取組が展開される
・学校運営協議会の機能である学校運営に関する基本方針の承認を通じて、地域住民や保護者等に対する説明責任の意識が向上するとともに、地域住民や保護者等の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となる
・学校運営協議会の機能である学校運営や教職員の任用に関する意見を通じて、教職員の意識の向上、学校の組織としての意識や力の向上につながりやすい
・類似の仕組みには、地域住民や保護者等の支援のみを求める例が見られるが、コミュニティ・スクールの場合には多様な人材の英知を結集することができるため、学校運営の改善を果たすより確かなPDCAサイクルを確立しやすくなる
・学校関係者評価の仕組みを生かしたコミュニティ・スクールにしていくことで、学校・家庭・地域の関係者が共に成果や課題を共有し、取組の改善に生かしていく学校運営のPDCAサイクルが有機的に機能していく


 学校や教育委員会が自らコミュニティ・スクールの意義や成果等を理解し、コミュニティ・スクールの道を選ぶことが最も大切なことである。ある県では、コミュニティ・スクールの導入に当たって、各学校が学校支援等の取組を通じ、家庭や地域と連携・協働しながら地域に開かれた学校づくりの推進に努めている現状を踏まえ、まずは、コミュニティ・スクールに指定されていない学校が主体的に地域住民や保護者等が参画する協議会を設置し、協議を通じて教育課題を共有し、その課題の解決に向けて一体となって教育活動に当たる仕組みを設け、段階的にコミュニティ・スクールへの移行につなげている。こうした学校の自主的・自律的な動きを後押ししていくなど、学校や教育委員会の主体的な環境整備を促していくことが必要であり、類似の仕組みを有している地域において、持続可能な仕組みとして、コミュニティ・スクールが推進されるよう、財政面等の支援を行っていくことが有効である。
 また、コミュニティ・スクールの裾野を広げていくことを目指して、平成23年度より「地域とともにある学校づくり」をもとに推進してきたコミュニティ・スクールの普及・振興策を継承し、一層発展させていく必要がある。

【推進のための具体的方策】

◆国は、コミュニティ・スクールに対する不要感・抵抗感等を指摘する声に対し、同制度の付加価値や成果等について丁寧に説明し理解を促すとともに、以下の取組を推進する。
 ・「学校を核とした地域力強化プラン」を通じた、コミュニティ・スクールと「地域学校協働本部」等の一体的な取組に対する重点的な支援
 ・学校評議員や類似の仕組みからコミュニティ・スクールに段階的に発展していく取組に対する財政的な支援
 ・学校関係者評価委員会を生かしたコミュニティ・スクールに対する財政的な支援
 ・学校運営協議会によらない形で、地域住民や保護者等が学校運営に参画する体制を構築している取組の収集と積極的な発信、段階的な発展プロセスの可視化



(2)学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化
 コミュニティ・スクールを核として地域とともにある学校づくりを一層推進するためには、各学校が地域住民や保護者等に対する説明責任を果たし、地域の人々から一層信頼される学校運営を進めていく必要がある。そのためには、これからの学校は、地域との関係を構築し、地域の人々と一体となった取組を進めることができるマネジメント力(30)を備える必要があり、学校が組織としてのマネジメント力を最大限発揮できるよう、体制整備を図っていく必要がある。この視点は、学校がチームとして教育力・組織力を向上させ、一人一人の子供の状況に応じた教育を実現させる観点からも重要な視点である。
 とりわけ、校長は、学校運営の最終責任者として、リーダーシップを発揮するために、まず、子供たちや地域の実態を踏まえ、学校のビジョンを策定し、教職員のみならず、地域住民や保護者等に対して、意識や取組の方向性の共有を図ることが重要である。その上で、校長は、子供の育ちを軸に据え、地域住民や保護者等の力を学校運営に生かし、地域との連携・協働を推進していく意識と能力を備えていくことが重要である。
 また、コミュニティ・スクールを通じ、地域住民や保護者等の力を学校運営に生かしていくことが、子供たちの学びを豊かにし、学校の組織としての力を高め、学校を一層活性化していく基盤となることを、現場の教職員全体の共通認識としていく必要がある。すなわち、学校運営が個人の能力に依存するのではなく、学校が組織として力を発揮していけるよう、教職員の負担軽減の視点を持ちながらも、コミュニティ・スクールに教職員全体が関わるという意識を醸成する必要があり、学校と地域の連携・協働を円滑に行うための資質を養成していくとともに、教職員に対する研修内容の充実が求められる。この際、課題を抱える子供たちを見守り支える観点からも、保健福祉部局等との連携・協働の視点や家庭状況を理解する視点等も求められる。
 一方、学校と地域の人々が全体として目標を共有し、役割分担を進めながら、取組にふさわしい組織的な体制を構築していく必要があり、学校の中で学校と地域をつなぐ役割を担うコーディネート機能の充実が重要となる。学校内の体制整備の事例として、学校と地域の連携に関する職務を担当する教職員を置く例や校務分掌に位置付ける例、事務職員をコミュニティ・スクールの運営の中心的役割に位置付けている例、社会教育主事有資格者の教員を地域連携担当に位置付けることを積極的に推進している県もある。こうした事例では、地域との協働による授業や体験活動等の調整が円滑に行われ、地域連携に関する情報発信が積極的に行われるなど効果を発揮している。また、教職員がチームとして学校運営に関わるという観点等から、事務職員が学校運営に積極的に関わっていく視点が求められる。

(30)本答申で言う「マネジメント力」とは、学校の有している能力・資源を最大限生かし、学校に関与する人たちのニーズに適応させながら、学校教育目標を達成していく力を指す。地域とともにある学校としてのマネジメント力とは、目指すべきビジョンの達成に向かって、学校内の組織運営を管理することにとどまらず、地域との関係を構築し、地域の人材や資源等を生かした学校運営を行っていく力を指す。


【推進のための具体的方策】

◆国は、地域とともにある学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化を図るため、以下の取組を一層推進する。
(教職員の養成・研修段階における方策)
・教員養成課程や教職員の研修(初任者研修、十年経験者研修、管理職研修、事務職員研修等)において、地域とともにある学校づくりの視点が適切に反映されるよう、大学と教育委員会との連携の下で、学校と地域の連携・協働を円滑に行うための資質を養成していくこととし、教職課程においてその取扱いの充実を図るべく、関係法令及び教職課程の編成に当たり参考とする指針(教職課程コアカリキュラム)の整備のための検討を進める。また、独立行政法人教員研修センターが実施するマネジメント力向上のための研修プログラムの充実(管理職層、ミドルリーダー層、学校事務職員)を図るとともに、各都道府県教育委員会等が実施する教職員の研修機会・内容の充実を促し、必要な支援を行う。
(地域連携を担当する教職員の明確化等教職員体制の整備)
・国は、学校と地域の信頼関係を構築し、地域の力を生かした学校教育の充実や、学校全体の負担軽減、マネジメント力の向上を図るため、学校内において地域との連携の推進を担当する教職員を法令上明確化することで、校内体制の整備を図る。この際、社会教育主事有資格者の活用を図ることも検討するとともに、授業時数や校務分掌等での負担軽減を含めた学校全体の業務の最適化や、教職員体制の整備充実を図ること等を通じ、当該職員が地域との連携に力を発揮できる環境の確保を図ることも検討する。また、事務職員については、学校運営事務に関する専門性を生かし、学校の事務体制を充実させるため、職務内容の見直し等を検討する。
・国立教育政策研究所や事務職員の研究・研修団体等と連携し、研修プログラムモデルの開発・普及を行うなど、地域連携の推進を担当する教職員や事務職員の育成を促す。


(3)学校運営協議会の委員となる人材の確保と資質の向上
 コミュニティ・スクールが実効力を持って機能するためには、学校運営協議会の委員として、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、学校をより良いものにしていくという当事者意識と意欲を持ち、学校と共に行動していける人材を確保していく必要がある。
 小規模の自治体等においては、学校運営協議会の委員の確保が難しいという声や、地域の会議に出てくる人はいつも固定化されているといった話が聞かれる。学校運営協議会が活力を持ち、持続的に運営されていくためには、委員の流動性を確保しつつ、継続的に人材を確保していく仕組みを構築することが必要である。
 学校運営協議会の委員としての資質を備えた人材を最初から求めることは難しいが、地域には学校に協力的で、子供たちとの関わりに熱心な人材は少なからず存在する。そうした人材を将来の学校運営協議会の委員の候補として、熟議や研修等を通じて資質の向上を図ることにより、育てることができる。例えば、学校行事に積極的に参加・協力している人や、地域イベントの実施に携わり子供たちの育ちを見守る人、PTAの役員等を協議会の委員候補としていくことで、人材を確保すること等も有効である。また、各地域で活躍している地域コーディネーター等が学校運営協議会の委員として参画することが有効であり、学校運営協議会に対する理解を深め、推進の要となっていくことが期待される。
 取組が継続的・安定的に発展し、活性化していくためには、関係者間で目標や課題意識を共有し、その地域の特色を生かしたコミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが重要であり、学校運営協議会の委員が、学校関係者や地域住民、保護者等と共に学び合い、教育の当事者としての意識を醸成する研修等の機会や熟議の場の充実が必要である。
【推進のための具体的方策】

◆国は、学校運営協議会の委員に求められる資質能力の明確化と育成システムの整備を促進する。また、各都道府県教育委員会等における学校運営協議会の委員等に対する研修機会・内容や熟議の場の充実を促すとともに、必要な支援を行う。


(4)地域住民や保護者等の多様な人々の参画の促進
 コミュニティ・スクールを核に、地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、学校運営協議会の委員のみならず、地域住民や保護者等にも、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をより良いものにしていくという当事者意識を高め、学校と地域住民や保護者等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが重要である。
 コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題の一つに、「学校運営協議会の存在や活動が保護者・地域にあまり知られていない」といった認識がある。また、地域人材による参画も学校支援ボランティアなど一部の人々に限られており、必ずしも地域全体の動きに発展していない状況もある。地域の一部の人々だけが参画し、協力するのではなく、地域全体で子供たちの学びを展開していくために、地域住民や保護者、関係機関・団体など多様な主体の参画を促進していくとともに、当事者意識の醸成を促していくことが必要である。
 例えば、幼児期から中学校卒業程度までの子供たちの育ちや学びを地域ぐるみで見守り、支援するための取組を県全体で推進するなど、学校を核として、地域の様々な人材や資源を結びつける動きが各地で広がっている。地域のボランティアや保護者など個人としての関わりにとどまらず、自治会やPTA、おやじの会等の地域の団体や、企業、大学、NPO、地域人材を中心として構成する家庭教育支援チーム(31)など、地域の多様な主体との連携を深めることにより、地域とともにある学校づくりに対し、参加から参画へ、協力から協働へと、具体的な行動を働き掛けていくことが求められる。また、多言語・多文化社会の理解に資する観点から、日本語指導が必要な外国人児童生徒の保護者等が参画することも重要である。
 また、コミュニティ・スクールの取組は、学校運営の改善のみならず、地域コミュニティを持続的に発展していく観点からも有効である。例えば、コミュニティ・スクールを基盤とし、ふるさとの未来を託せる人材の育成を目標に、村役場や農協等の関係機関等との連携を図りながら、村の特産物生産の体験学習や、村の課題を探求する学習等を取り入れている事例や、高等学校において、コミュニティ・スクールを基盤に地元自治体との協働関係を築き、地元企業やNPO、町役場等との協働による課題解決型学習を実践し、地域の課題解決・活性化に大きく寄与している事例もある。
 地方創生という課題をはじめ、教育委員会・学校と首長部局等の関係者が、地域と地域の将来を担う子供たちの将来像を共有した上で、協働により課題解決の取組を推進していくことで、活力ある学校づくりと地域の活性化を図っていくことも重要である。この際、小・中学校における取組にとどまらず、高等学校においても、地元自治体や地元企業・団体等とのつながりを深め、地域課題の解決に貢献する取組を支援すること等を通じ、小・中学校で育まれた地域への愛着や興味・関心を更に発展させ、地域を担う人材へと成長していくことを促進していくことも重要である。
 さらに、子供たちが地域の一員としての自覚と意識を高める観点から、地元の大学生や高校生等の若者を積極的に巻き込み、主体的・実践的な活躍の機会・場を設けていくことも重要である。コミュニティ・スクールを通じて地域に育てられ、成長した若者が、次の世代の子供たちを育成する担い手となっていくことで、自身も育ち成熟していく「人づくりと地域づくりの好循環」につながっていくことが期待される。これは、学校運営協議会の委員の育成・確保の観点からも有効である。

(31)子育て経験者、教員OB、民生委員、児童委員、保健師、臨床心理士、社会福祉士等の地域の様々な人材や専門家で構成され、保護者への学びの場の提供や、地域における親子の居場所づくり、訪問型家庭教育支援等の業務を行う任意の組織。文部科学省では登録制度や補助事業により家庭教育支援チームの取組を推進している。

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【推進のための具体的方策】

◆国は、コミュニティ・スクールと一体で、「地域学校協働本部」など学校と地域が連携・協働して教育支援に取り組む仕組みを促進するとともに、学校と地域をつなぐコーディネーターの育成・機能強化を促進する(「地域学校協働本部」や地域コーディネーターの在り方については第3章参照)。
◆また、学校・家庭・地域の関係者を広く集めた「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」等を開催し、普及・啓発を図るとともに、各都道府県教育委員会等が開催する、地域住民や保護者等の多様な人々の参画を促進するための研修や熟議、フォーラム等に対する支援を行う。この際、地域で活躍する様々な教育関係機関・団体等の全国組織との連携を図る。
◆首長部局等との連携・協働による課題解決学校モデルを構築し、その成果の普及と全国への発信等を行う(高等学校のコミュニティ・スクールの推進をはじめとする高校魅力化の取組への支援等)。


(5)体制面・財政面における支援等の充実
 前述のとおり、コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題認識として、管理職や担当教職員の勤務負担が大きい、委員謝礼や活動費等の資金が十分でないといった課題が示されている。学校運営協議会の設置に伴い、会議の開催そのものの業務のほか、委員との連絡調整や協議事項等の調整など、運営に係る様々な業務が生じることから、課題を踏まえた適切な支援が求められる。
 コミュニティ・スクールの推進に当たり、継続的・安定的な運営を可能とするためには、教職員の勤務負担の軽減も含め、教職員体制の整備等の人材面や財政面での支援の充実を図っていく必要がある。導入の状況には地域差もあることから、とりわけ、未導入の地域を中心とした支援を着実に推進することが必要である。また、継続的・安定的な取組を保障するための財政支援の仕組みが必要である。
 学校の中で学校と地域の人々をつなぐ役割を担うコーディネート機能として、教職員を地域連携担当として校務分掌に位置付ける事例以外にも、地域人材をコーディネーターとして校内に配置する例や、学校支援地域本部の地域コーディネーターを学校運営協議会の委員と位置付け、両者の橋渡し役を担うだけでなく、運営の中核も担っている例もある。こうした学校では、地域との連携・協働が円滑に行われるだけでなく、教員が子供と向き合う時間を確保する観点でも有効であると感じており、こうした取組も含め、体制面での支援の充実を図っていく必要がある。文部科学省では、平成27年度予算から、学校運営協議会の運営に係る様々な業務を担う地域人材として、CS(32)ディレクターの仕組みを創設したところであり、積極的な活用を一層促進する必要がある。
 さらに、学校が複雑化・困難化した課題を解決し、子供たちに力を身に付けさせていくためには、学校や教職員一人一人の業務を見直し、改善していくことが求められる。文部科学省では、平成27年7月、各教育委員会における学校現場の業務改善に向けた支援に資するよう、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を作成・公表した。国や教育委員会は、このガイドラインも活用し、教職員が業務を効率的・効果的に進めることができるような支援を行うことが必要である。
 このほか、コミュニティ・スクールの運営をより効果的なものとするためには、学校の創意工夫を生かした様々な取組が可能となるよう、校長裁量予算や学校財務における校長権限の拡大など、校長の裁量権を拡大することが重要である。

(32)CSは、Community School の略。


【推進のための具体的方策】

◆国は、コミュニティ・スクールの導入に伴う体制面・財政面等の負担解消に向け、以下の取組を推進する。
 ・コミュニティ・スクールの仕組みの導入に伴う教職員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保するための体制の整備充実(事務の共同実施の促進など事務機能の強化や、コミュニティ・スクール導入に伴う教職員の加配措置等)
 ・コミュニティ・スクールの運営や分野横断的な活動の総合調整など総括的な立場で調整等を行うCSディレクターの配置促進
 ・学校と地域の連携・協働の中核となる地域コーディネーターの配置促進
 ・コミュニティ・スクールの導入等に伴う財政的な措置の充実(コミュニティ・スクール導入を目指す地域における運営体制づくりの支援、コミュニティ・スクールの取組の充実を図るための支援の充実(33))
 ・高等学校や特別支援学校等の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの実証研究に対する支援
 ・「学校現場における業務改善のためのガイドライン」等を活用した研修の実施や業務改善の取組に対する財政的な支援の充実
 ・学校裁量の拡大のための好事例の普及等(教員公募制等人事面での裁量拡大、使途を特定しない裁量的経費等予算面での学校裁量の拡大)

(33) 「コミュニティ・スクール導入等促進事業」において、国が1/3を補助。2/3の地方負担部分については、地方財政措置されている。


(6)幅広い普及・啓発の推進
 前述のとおり、コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない理由として、コミュニティ・スクールに対する不要感や、任命権者の人事権が制約される、特定の委員の発言で学校運営が混乱するといった不安感を挙げる声がある。
 こうした指摘に対し、コミュニティ・スクールが学校と地域との連携・協働体制を持続可能にする仕組みとして有効な手段であるという意義や、法的な権限についての正確な解釈のみならず、校長がリーダーシップを一層発揮し、特色ある学校づくりを進めていく上でも有効な手段であることなど、その付加価値や成果、運営上の課題に対する工夫等について丁寧に説明し理解を促していく必要がある。
 特に、コミュニティ・スクール指定の決め手として、「教育委員会からの働きかけ」を指摘する学校は約8割と、教育委員会の姿勢、とりわけ、教育長の姿勢が鍵となる。コミュニティ・スクールは、地域住民や保護者等の参画によって学校の意識や力を高め、組織的・継続的に学校運営の改善等を果たす有効な仕組みであり、子供たちや学校の抱える様々な課題の解決に生きてくる仕組みであるということを、教育長の意識にこそ働き掛けていく必要がある。
 さらに、コミュニティ・スクールは、地域コミュニティの創生、まちづくりにもつながる取組であり、市民参画の有効な手段として、首長にも働きかけていくことが求められる。
 他方、これまで小・中学校においてコミュニティ・スクールが進んできた状況であったが、小・中学校のみならず、幼稚園、高等学校及び特別支援学校におけるコミュニティ・スクールの推進を積極的に働きかけていく必要がある。
 このほか、コミュニティ・スクールの更なる発展のためには、子供たち、教職員、保護者、地域の変容等の観点から、各校の取組を客観的に評価し、その結果を共有・発信する必要がある。

【推進のための具体的方策】

◆国は、コミュニティ・スクールの普及・啓発を図るため、以下の取組を推進する。
 ・都道府県教育委員会に対し、域内市町村の教育長のための研修と熟議の充実を促すなど、教育長への働きかけの促進
 ・全国都道府県教育委員会連合会や全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、全国町村教育長会、各種校長会・園長会等の関係団体と連携した、コミュニティ・スクールを推進する運動のネットワーク化の促進
 ・関係団体等との連携による首長への働き掛けの促進、総合教育会議の活用の促進
 ・地域とともにある学校づくり推進フォーラム等の開催
 ・各都道府県教育委員会等の開催する推進フォーラム等への財政的支援
 ・コミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)(34)の配置充実と未導入地域に対する重点的な支援、各都道府県におけるコミュニティ・スクール普及のための体制構築への支援
 ・学校種の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの取組の収集と積極的な発信
 ・コミュニティ・スクールの成果検証や導入に当たっての阻害要因の解消に向けた取組に関する実証的研究への支援

(34)コミュニティ・スクールを導入しようとする教育委員会や学校等に対して、継続的できめ細かな支援・助言を行う推進員。コミュニティ・スクールの導入や実践経験のある元校長や教育長、学校運営協議会の委員等に委嘱。


2.都道府県・市町村の役割と推進方策
 これまでの提言を踏まえ、今後、各地方公共団体は、全ての学校がコミュニティ・スクールとなることを目指し、一層の拡大・充実が必要との認識に立って、積極的な姿勢で取組を推進していくことが求められる。
 そのためには、教育長をはじめとする教育委員会関係者や校長の意識が重要である。地域住民や保護者等の参画を得ることが学校運営の改善、教育改革の実現のための大きな力となるというビジョンと、学校や地域の理解を得るためのリーダーシップの発揮が不可欠である。
 コミュニティ・スクールへの不要感や不安感等の課題認識は、指定により大きく解消され、その先に新しい学校の姿を見いだすことができる。課題認識を乗り越え、未来に視点を持って一歩を踏み出すことを期待したい。踏み出さなければ、何も変わらない。
 コミュニティ・スクールを核に地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、都道府県、市町村における学校教育部局と社会教育部局の連携・協働の強化が不可欠であり、両者の連携・協働による取組の推進が必要となるとともに、総合教育会議の活用等を通じた首長部局とのパートナーシップを構築していくことも重要である。
 なお、各教育委員会及び校長においては、コミュニティ・スクールの取組が学校運営の改善・充実に生かされ、子供たちの成長につながっていくよう、実効性のある運営に力を尽くすことが必要である。

(1)都道府県の役割と推進方策
 都道府県教育委員会(以下、本項目において「都道府県」という。)においては、広域人事など市町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を重点化し、市町村の自主性を尊重しつつ、教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められる。
 その前提の上で、都道府県の中には、教育振興基本計画にコミュニティ・スクールの推進目標を掲げ、県下100%の指定を目指し、域内市町の教育委員会を積極的に支援しているところもある。また、まずは学校と地域との信頼関係の構築から始めるために、学校を主体とした類似の仕組みを設けつつ、コミュニティ・スクールへの移行を促すなど、段階的な取組を進めているところもある。さらに、域内市町村の教育委員会や学校関係者等を対象とした協議会を開催したり、学校経営の基準として、コミュニティ・スクールの視点を位置付け、新任校長の研修等の充実を図るなど、コミュニティ・スクールを積極的に推進しているところがあるが、そうした取組は一部にとどまっている。
 今後、都道府県においては、コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを一層推進するため、教育振興基本計画への位置付けをはじめ、都道府県としてのビジョンと推進目標を明確に示すことが必要である。また、域内市町村の教育長等への研修の充実を図るとともに、「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)等の開催により、域内市町村の教育委員会や学校・家庭・地域の関係者等に対し、広くコミュニティ・スクール等への理解促進を図ることが求められる。また、学校の管理職等への研修会の企画・実施、マネジメント力をもった管理職・教職員の育成及び配置とその積極的な評価等を推進することが求められる。
 さらに、地方公共団体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携・協働を密にしながら、コミュニティ・スクールと「地域学校協働本部」等の一体的・効果的な取組を促すとともに、地域コーディネーター等の地域関係者と学校運営協議会委員等の研修を合同で開催するなど、関係者が共に学び合い、課題や目標等を共有し、ネットワークを深めることができる機会を充実していくことが求められる。

【推進のための方策】

・コミュニティ・スクールの推進についての都道府県教育振興基本計画への位置付けなど教育委員会としてのビジョンの明確化と推進目標の明示
・知事部局と連携・協働した施策の策定・実施
・コミュニティ・スクールと「地域学校協働本部」等の促進とその一体的・効果的な推進に向けた地方公共団体内のチームとしての連携・協働体制の強化
・指導主事や社会教育主事の意識の向上と連携強化のための研修と熟議の充実
・都道府県としてのコミュニティ・スクールの推進の在り方等を協議する「コミュニティ・スクール等推進協議会」(仮称)の教育委員会内への設置
 ※現在の学校支援地域本部等に係る推進委員会を活用することが有効
・域内市町村の教育長及び教育委員のための研修と熟議の充実と、学校単位の指定から市町村全域への指定の促進
・域内市町村教育委員会や学校関係者等に対する研修と熟議の充実
・域内市町村におけるコミュニティ・スクールの導入の促進や取組の充実のための財政的な支援
・都道府県立学校におけるコミュニティ・スクールの推進
・域内市町村教育委員会や学校関係者等に対する積極的な普及・啓発
(域内市町村教育委員会や教職員等の学校関係者、地域関係者等を対象とした「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)の開催、国の制度等活用説明会の積極的活用など)
・学校運営協議会委員や学校関係者、地域関係者等の研修機会・内容や熟議の場の充実
 ※地域コーディネーター等の研修との合同開催も有効
・地域連携の推進を担当する教職員の明確化(社会教育主事有資格者や事務職員の積極的な活用)
・教職員のマネジメント力向上等のための研修機会・内容の充実
(初任者研修、十年経験者研修、事務職員やミドルリーダー等研修における地域との連携・協働に係る講座や熟議等の演習の実施、地域連携・協働に係るマネジメント力の向上のための管理職研修の充実)
・「学校現場における業務改善のためのガイドライン」等を踏まえた業務改善の推進


(2)市町村の役割と推進方策
 子供たちに最も身近なところで教育活動を担っているのは学校であり、市町村である。市町村教育委員会(以下、本項目において「市町村」という。)においては、自身の設置している学校の将来像を校長と共有するとともに、地域との連携・協働体制を確立するため、コミュニティ・スクールの推進を支援することが求められる。地域住民や保護者等に対しても、取組の必要性や成果を広く周知するなど、学校への理解と参画を促す環境づくりが重要である。
 また、都道府県と同様、地方公共団体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携・協働を密にしながら、まずは地域住民による学校支援、学校・家庭・地域の連携・協働体制の構築から始め、学校運営への参画に発展していく、あるいは、学校評議員を機能化・活性化し学校運営への参画に発展していくなど、コミュニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりを推進していくことが求められる。
 このため、市町村は、国による実践研究の支援を積極的に活用するなどにより、教職員と地域の人々、保護者との熟議を重ね、校内及び地域との協働体制づくりを進めることが求められる。
 今後の少子化の更なる進行に伴い、学校統合や小規模校の存続など、活力ある学校づくりを目指した市町村の主体的な検討がなされることとなるが、コミュニティ・スクールを導入し、学校と地域のより密接な連携・協働関係を構築することは、魅力ある学校と地域づくりの推進につながる大きな契機となり得る。また、学校と地域が連携・協働した取組や、地域資源を生かした教育活動を進めること等により、地域に誇りを持つ人材の育成を図ることも求められる。
 なお、中学校区内の複数の学校が連携した運営体制は、地域とともにある学校の運営体制としてふさわしいものと考えられる。このため、コミュニティ・スクールの推進に当たっては、中学校区を運営単位として捉え、複数の小・中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりを進めていくことが期待される。

【推進のための方策】

・コミュニティ・スクールの推進についての市町村教育振興基本計画への位置付けなど教育委員会としてのビジョンの明確化と推進目標の明示
・首長部局と連携・協働した施策の策定・実施
・コミュニティ・スクールと「地域学校協働本部」等の促進とその一体的・効果的な推進に向けた地方公共団体内のチームとしての連携・協働体制の強化
・指導主事や社会教育主事の意識の向上と連携強化のための研修と熟議の充実
・教職員等の学校関係者、地域住民、保護者等に対する積極的な普及・啓発(国の制度等活用説明会も活用したフォーラムや研修会等の開催、学校・家庭・地域の連携・協働体制の構築に向けた熟議の場づくりなど)
・コミュニティ・スクール未指定の地域・学校における導入の推進(国の支援事業の積極的活用による学校・家庭・地域の連携・協働体制づくりの推進、事務機能の強化など教員の負担軽減も含めた効果的・効率的な校内体制の整備等)
・複数の小・中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりの推進
・管理職等のマネジメント力向上のための研修機会・内容の充実
・学校を核とした地域づくりの視点によるコミュニティ・スクールの展開(例:地域の魅力を発見する体験活動、地域の課題を知り探求する学習、児童生徒と共に活動する場の提供等)
・学校施設の積極的な開放等による地域の学び・集いの場づくりの推進
・地域住民や保護者等の参画の促進、関係機関・団体等の連携・協働の促進(自治会、PTA、婦人会、青少年団体、NPO、家庭教育支援チームなど地域組織との連携)
・地域連携の推進を担当する教職員の明確化(社会教育主事有資格者や事務職員の積極的な活用)
・「学校現場における業務改善のためのガイドライン」等を踏まえた業務改善の推進
・コミュニティ・スクールとしての取組の充実を図るための、学校裁量で支出できる運営経費の措置


第3章 地域の教育力の向上と地域における学校との協働体制の在り方について
第1節 地域における学校との連携・協働の意義
【ポイント】

◆厳しい教育環境の中、子供を軸として、次代を担う子供たちの成長に向けての目標を共有し、地域社会と学校が協働して取り組むことが必要。
◆地域と学校が連携・協働することで、新しい人と人とのつながりも生まれ、地域の教育力の向上につながる。
◆地域の教育力の向上は、地域の課題解決や地域振興、さらには、持続可能な地域社会の源となり、「生涯学習社会」の構築にも資する。



 第1章でも述べたように、未来を担う子供たちは、厳しい挑戦の時代を乗り越え、高い志や意欲を持つ自立した人間として、他者と協働しながら未来を創り出し、課題を解決する能力が求められている。「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた学校のパートナーとして、地域の側も広く子供の教育に関わる当事者として、子供たちの成長を共に担っていくことが必要である。さらに、子供たちの成長に向けて、多くの住民が参加して地域と学校とが連携・協働していくことは、子供たちの教育環境の充実にとどまらず、地域住民の学びを起点に地域の教育力を向上させるとともに、持続可能な地域社会を創っていくことにもつながる。
 このため、今後、より多くの、より幅広い層の地域住民が参画し、子供たちの成長を地域で担うため、地域における学校との連携・協働を積極的に推進していくことが必要である。
 地域における学校との連携・協働を進めていく際には、子供たちの将来、子供たちの成長・発達に向けて、何よりも子供を軸として検討することが必要である。すなわち、変化の激しい社会の中で、次代を担っていく子供たちに対して、どのような資質を育むのかという目標を共有して、地域社会と学校が協働して子供の教育に取り組んでいく必要がある。また、今後は、子供たちを社会の主体的な一員として受け入れ、子供も大人も、より多くの、より幅広い層の地域住民が参画し、地域課題や地域の将来の姿等について議論を重ね、住民の意思を形成し、様々な実践へつなげていくことが重要である。
 このように、子供の教育という共通の旗印の下に、地域住民がつながり、地域と学校が協働することで、従来の地縁団体だけではない新しい人と人のつながりも生まれるであろう。さらに、地域社会の課題解決にも、地域の一員として学校も関わっていくことにつながる。このため、真の意味で地域と学校が連携・協働することを目標としていく必要がある。
 地域社会の側においても、これまでの単なる「学校支援」を超えた体制整備が必要である。社会教育の実施体制を強化しつつ、それぞれの地域の状況に合ったコーディネート機能を構築するとともに、学校のパートナーとしての機能・実態を持った地域社会を維持することが必要である。例えば、郷土の伝統文化や地域防災、子供たちとの接し方等について、大人が子供たちに教えるためには、まず大人が学ばなければならない。学校に関わることは、すなわち大人の学びが豊かになることであり、子供の教育を軸として、学校教育と社会教育は表裏一体の関係であると言える。そのため、公民館等の社会教育施設をはじめとする学びの場やICTを活用したものも含め、多様な形態による学習機会を整備することなど、今後も社会教育を充実していく必要がある。
 さらに、地域の教育力の向上は、地域の課題解決や地域振興に向けた連携・協働につながり、持続可能な地域社会の源となる。また、人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される「生涯学習社会」の構築に資するものである。

第2節 地域における学校との連携の現状等
【ポイント】

◆これまでの、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組を通じ、学校と地域の関係構築につながるなど、一定の成果を上げてきたことを評価。
◆一方で、現状の活動に関しては、更なる取組の充実と普及が必要であり、以下のような課題がある。
 ・それぞれの活動が個別に行われ、必ずしも活動間の連携が十分でない
 ・コーディネート機能を特定の個人に依存し、持続可能な体制が作られていない
 ・地域から学校への一方向の活動内容にとどまっている場合がある
 ・地域の活性化に向けた取組はなお発展途上にある
◆地域住民等が学校のパートナーとしてより主体的に参画し、地域における学校との関係を新たな関係(連携・協働)に発展させることが必要。


1.これまでの地域における学校との連携の現状
(1)これまでの地域における学校との連携の経緯等
 学校週5日制への移行、少子化の進展とも併せて、学校・家庭・地域社会の相互の連携が重要になってきており、地域における学校との連携に関しては、これまで主に以下のような取組が行われてきている。
・ 平成14 年度から、学校週5日制の完全実施と併せて実施された、学習指導要領で、生涯学習の基礎ともなる「生きる力」の育成が必要とされた(35)。
・ 同じく、平成14年度から「新子どもプラン(36)」が実施され、関係府省の協力の下で、子供たちの体験活動の充実に資する各種施策が推進されてきた。
・ 平成18年には、教育基本法が戦後初めて改正され、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力の重要性がうたわれた(37)。
・ 平成19年度からは、文部科学省と厚生労働省の連携により、「放課後子どもプラン」が推進され、放課後や週末等の子供たちの安心・安全な居場所を設け、全ての子供たちに学習や体験・交流活動等の機会を提供する「放課後子供教室」の取組が推進されている(38)。
・ 平成20年には、平成18年の教育基本法の改正を受け、社会教育法が改正され、放課後子供教室や学校支援地域本部の活動を念頭に置いて関係規定が新設された。
・ これを受け、平成20年度からは、地域住民等の参画により、学校の教育活動を支援する仕組みであり、地域が学校と連携するための活動体としての「学校支援地域本部」が推進されてきた。
・ 平成25年には、第2期教育振興基本計画において、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組を充実するための体制を全国の小・中学校区に構築することが施策目標とされるなど、地域における学校との連携・協働に関する事項が政策体系に位置付けられてきた(39)。
・ 平成26年度からは、子供たちが多様な技能や経験を持つ多くの社会人と出会う機会を作っていくことが重要との考え方から、地域の人材や企業・団体・大学等と連携した土曜日の教育活動が推進されている。
・ 平成27年度からは、経済的な理由や家庭の事情により、家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身に付いていなかったりする子供たちに対して、地域住民等による学習支援である「地域未来塾」の取組が推進されている。

(35)平成10年から11年にかけて改訂され、平成14年度からの学校週5日制の完全実施と併せて実施された学習指導要領では、新たに設けられた「総合的な学習の時間」等を活用して、各教科等の学習で得た知識を様々な体験活動の中で実感を持って理解することや、学び方やものの考え方を身に付けさせるなど、生涯学習の基礎ともなる「生きる力」の育成が必要とされた。
(36)平成11~13年度まで「全国子どもプラン」として、家庭や地域では、豊富な生活体験、社会奉仕体験、自然体験等を経験させ、子供たちに豊かな心やたくましさ等の「生きる力」を育むため、地域で子供を育てる環境を整備することとして、関係府省の協力の下で、子供たちの体験活動の充実に資する各種施策が推進されてきた。
(37)近年、法令面において、地域における学校との連携・協働に関する規定が整備されてきた。平成18年の教育基本法改正では、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力について規定が創設された(第13条)。それを踏まえ、平成20年の社会教育法改正では、放課後子供教室(第5条第13号)や、学校支援地域本部の活動も含む概念としての、「社会教育における学習の機会を利用して行った学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会の提供等」(第5条第15号)が教育委員会の事務として、新たに規定された。
(38)特に、放課後や週末等の子供たちの安全・安心な居場所を設け、全ての子供たちに学習や体験・交流活動等の機会を提供する放課後子供教室(平成16年度から「放課後子供教室」の前身である「地域子ども教室推進事業」が始まっている)に関しては、平成26年7月に、文部科学省及び厚生労働省が策定した、「放課後子ども総合プラン」に基づき、「女性の活躍推進のためには、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、全ての就学児童が放課後を安心・安全に過ごし、多様な体験・活動ができるよう、関係府省が連携して総合的な放課後対策に取り組むことが必要」として、一体型又は連携型の放課後子供教室と放課後児童クラブの計画的な整備が推進されている。
(39)続いて、平成25年1月にまとめられた第6期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理では、「絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた学習活動や体制づくりの推進」のためには、「地域住民が積極的に参画して子供たちの学びを支援し、社会全体で子供たちを育むため、学校と地域が連携・協働する体制づくりが重要」とされた。これを受けて、第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)において、「絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた学習環境・協働体制の整備推進」という基本施策の下、「「学校支援地域本部」、「放課後子供教室」などの取組を充実させ、保護者はもとより、地域住民の参画により子供たちの学びを支援するための体制を、平成29年度までに全国の小・中学校区に構築する」ための取組の推進について記載された。


(2)地域における学校との連携の現状
 平成27年度、地域が学校と連携して行う様々な活動としては、学校支援活動を行っている学校支援地域本部が、公立小・中学校のうち約9,600校で実施、放課後等に地域住民等の参画により、子供たちに学習支援や様々な体験活動の機会を提供する放課後子供教室が公立小学校で約14,100教室実施されている。また、地域の人材・企業等の協力を得て行われる土曜日の教育支援活動が、公立小・中・高等学校のうち約10,000校で実施されている(40)。
 これらについては、取組が始まって10年以上が経過しており、その顕著な成果としては、例えば、登下校の見守り、花壇整備といった、地域住民にとっても比較的参画しやすい学校支援活動を通じて、地域の大人たちが、学校という場で子供たちに寄り添い、成長を支える「最初の一歩」となる活動として定着してきていることが挙げられる。地域によっては、その後、より多くのボランティアの参画を得て、より組織的な取組へと発展しながら、活動の充実につながってきているところもある。
 また、こうした様々な活動への長期の参画を経て、その間に構築した学校との信頼関係や、地域における人的ネットワークを活用して、特定の取組に参画するボランティアの一員から、学校を核とした地域活動の企画、連絡調整、人員配置等の調整を行うコーディネーター役を務めるに至るケースも次第に増えてきている(41)。
 また、コーディネーター等の企画調整により、学校支援活動を学校ごとだけでなく、幼稚園と小学校、小学校と中学校が連携して中学校区全体の活動とすることで、幼稚園・小学校の連携、小学校・中学校の連携も進展してきている事例もある。
 これらのそれぞれにおける活動や、その活動の長期にわたる蓄積等を通じて、参画するボランティアやコーディネーターに、地域の高齢者や子育て経験者をはじめとする一層多様な人材の参画が得られるようになってきた地域もあり、子供たちに多様性のある豊かな学習や体験活動を可能とする取組が全国各地で広まりつつある(42)。また、地域によっては、こうした取組が始まる以前から、公民館等の社会教育施設により、長年にわたり社会教育活動を通じた地域の活性化のための諸活動が進められてきており、このような活動が、地域における学校支援活動等の円滑なスタートや、その後の速やかな定着につながっている。このような公民館等の社会教育施設による活動は、現在においても、地域の実情に応じた地域と学校の連携の場の一つとして機能している。

(40)文部科学省所管の補助事業である「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」及び「地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育体制等構築事業」を活用した箇所数である。
(41)なお、保護者や地域の人が学校支援活動に関わることで学校の教育水準の向上に効果があると回答している小・中学校は約90%であるなど、教育面も評価されている(平成25年度 全国学力・学習状況調査より)。
(42)また、こうした活動の効果を示すものとして、東日本大震災の時に、避難所となった宮城県内の中学校で学校支援地域本部が設置されていた学校は自治組織が速やかに組織されるなど、緊急時の分担と協働作業につながった事例もあり、それを契機に、被災した各地において学校支援地域本部の設置が拡大した。


2.地域における学校との連携の課題と新たな関係(連携・協働)
(地域における学校との連携の課題)
 第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)では、今後取り組むべき具体的方策として、「全ての学校区において、学校支援地域本部や放課後子供教室の取組の実施など、学校と地域が連携・協働する体制が構築されることを目指す」とされており、更なる取組の充実と普及が必要である。そのためには、長期に取り組んでいる地域も、始めてまだ数年の地域も、学校支援地域本部等による活動が、学校を核とした地域活動への参画の「最初の一歩」としての役割を果たすことを十分に生かし、まずはしっかりとその活動を定着させることが重要である。
 しかしながら、地域によっては、地域でどのような子供たちを育てていくのか、どのような地域を創っていくのかという目標・ビジョンについての熟議が十分でなく、参画する地域住民や保護者等が一部の限られた人にとどまり、活動内容についても限定的な内容になってしまっていることもある。また、活動に参画する住民は子供たちと接する教育活動に関わることとなるため、地域で子供たちの成長を支えるということを自覚し、学校等の関係者と協力して取り組む姿勢が重要である。
 より多くの、より幅広い層の地域住民の参画を得ながら、活動間の連携・協働を促進し、個々の活動の幅を広げることによって初めて、様々な可能性を持つ子供たちの成長を支える地域の活動が真に地域全体としての活動につながっていく。子供たちの成長を支える持続的な活動としていくには、単に学校を支援するという活動を超えて、子供たちの成長のための目標を地域で共有しつつ、様々な活動を全体的に俯瞰して、子供たちの成長にとって地域が果たすことのできる活動を地域と学校が協働しながら実現していくことが必要である。
 そのためには、地域住民自らが、活動実施のための適切なコーディネートを行い、無理なく、できる時に、できる人材が力を結集して効果的に活動できるよう進めていくこと、多くの地域住民の参画を得て学校を核とした地域協働の在り方について熟議・検討することが有効であるが、そのための企画立案、コーディネート機能を発揮する体制の整備が十分に行われている地域はまだ限られている。
 また、それぞれの活動ごとにコーディネートがなされる状況もある。この場合、例えば、放課後の支援活動、学校支援活動、学校と連携した公民館活動等の活動が、それぞれ個別に行われており、それぞれ互いの活動の目標や、主に参画している関係者等の情報の共有等について、必ずしも連携が十分でなく、調整ができていないことによる地域人材や活動機会、場所の偏り、不足等の場合が生じている。さらに、コーディネート機能の大部分を特定の個人に依存し、結果として、持続可能な体制が作られていない場合が多いことも課題である。

(地域における学校との新たな関係(連携・協働)への発展)
 学校支援地域本部については、当初からの事業の目的(43)として、「多様な教育機会やきめ細かな教育の実現、教員の負担軽減による子どもと向き合う時間の確保」、「生涯学習社会の実現のため、地域住民自らの知識や経験を生かす場の拡充」、「地域の教育力の向上のため、学校を核とした地域の活性化」といったものがある。
 このうち、各地域における取組の開始当初、まずは地域住民の参画を得るため、登下校の見守りやドリルの丸付け等の授業補助等の、比較的容易に地域住民が参画できる内容から始めた地域が多く、そのような取組を通じて学校と地域の関係構築につながるなど、一定の成果を上げてきたことは評価されるものであり、今後も学校支援活動や放課後や土曜日の学習支援等の様々な取組を継続していくことが必要である。
 一方で、依然として地域から学校への一方向の活動内容にとどまっている場合もあり、子供たちと住民が共に活動することで地域の教育力の向上や地域の振興にもつながるという意識は必ずしも十分ではなく、地域の活性化に向けた取組はなお発展途上にあるという課題が挙げられる。
 また、10年以上の取組を経ても、地域と学校の連携・協働により取り組むべき課題である、次代を担う子供たちに求められる「生きる力」の育成に向けて地域住民等がより主体的に参画していくこと、活動を通じて地域の振興・創生につなげていくという、持続可能な地域づくりには至っていない地域が少なくない状況にある。
 既に述べたとおり、学校や地域が抱える複雑化・多様化した現代的課題に社会総掛かりで対応するには、いわゆる「教育は学校の役割」といった固定化された観念から離れ、子供たちの成長に対する責任を社会的に分担し、学校における「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、地域住民等がそのパートナーとして子供たちの成長を支える活動に、より主体的に参画するとともに、教育課程の内外の活動の中で地域住民等が持続可能な地域社会の創生につなげていくため、地域における学校との関係を新たな関係(連携・協働)に発展させていくことが必要である。

(43)「学校支援地域本部事業」は、平成20年度から国の委託事業として取組を開始。平成21年度からは、国と地方公共団体の分担による補助事業(「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」)における取組の一つとして実施されている。


第3節 地域における学校との協働体制の今後の方向性
【ポイント】

「支援」から「連携・協働」、「個別の活動」から「総合化・ネットワーク化」へ
◆地域と学校がパートナーとして、共に子供たちを育て、共に地域を創る。
◆地域と学校が連携・協働して、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支えていく活動を「地域学校協働活動」として、その取組を積極的に推進。
◆従来の学校支援地域本部、放課後子供教室等の活動を基盤に、「支援」から「連携・協働」、個別の活動から総合化・ネットワーク化を目指す新たな体制としての「地域学校協働本部」へ発展。
◆地域学校協働本部には、①コーディネート機能、②多様な活動、③持続的な活動の3要素が必須。
◆地域学校協働本部の実施を通じて、教職員と地域住民等との信頼関係が醸成され、コミュニティ・スクールの導入につながっていく効果も期待される。
◆地域学校協働活動の全国的な推進に向けて、地域学校協働本部が、早期に全小・中学校区をカバーして構築されることを目指す。


1.地域における学校との協働体制の目指す姿
(1)今後の方向性-連携・協働と総合化・ネットワーク化-
 今後、国全体として、各地域を支援しつつ、目指すべき整備の方向性は、第一に、第1章第2節で既に述べたとおり、地域と学校がパートナーとして、共に子供たちを育て、そのことを通じて共にこれからの地域を創るという理念に立つことである。「支援」を超えて、目的を共有し長期的な双方向性のある展望を持った「連携・協働」に向かうことを目指す。
 第1章第1節でも述べたように、地域の人的・物的資源を活用するなど、学校教育の目指すところを社会と共有・連携しながら実現する必要がある。例えば、郷土学習の場合は、地域住民と学校とが相互に知識と経験、物や施設を提供し合って教育活動を行うことが望ましい。その際、話合いの過程と継続的な実施を通じて、地域の伝統文化の継承者が生まれ、地域の持続・発展の芽が育つこととなる。さらに、地域住民が「学び」を通じて子供たちや学校と新たな関係を作り、それぞれで考え、成長していくことが期待できる。
 また、これらの学習については、基礎的な教育を学校の授業でも行った上で、放課後や土曜日における社会教育の場で更に発展的な活動を行うことも考えられる。これは、学校教育と社会教育の連携によって学びを深める一例である。また、地域住民の身近な学習・交流の場である公民館等の社会教育施設には、多様な人々が集い、地域活動の歴史やノウハウが集積されており、世代間の絆をつなぐ協働の場の一つとして期待される。
 第二に、活動やコーディネート機能のつながりを深めることが重要である。地域によっては、既に、授業への地域人材の協力、放課後子供教室、土曜学習、親子が参加する地域行事等を複数のコーディネーターが手分けしながら一体の組織で企画・実施している例がある。地域でどのような子供たちを育てていくのか、どのような地域を創っていくのかという目標・ビジョンについて熟議を行いながら、多様な活動の違いを超えて総合的な運営を進めることにより、地域の人的なネットワークが広がり、協力体制が手厚くなると考える。
 このように、活動を広げながら、学校・地域社会それぞれの特性を生かした「連携」と、共通の目標に向かって相互に意見を交わしつつ、それぞれの資源を最適に組み合わせて達成を目指す「協働」の双方の、地域における基盤となる体制が今後の教育には必要である。そのためには、従来の学校支援地域本部活動や放課後子供教室等の個別の取組を有機的に結び付けていくことが必要である。
 このように、「支援」から「連携・協働」、個別の活動から総合化・ネットワーク化を目指し、地域と学校が連携・協働して、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支えていくそれぞれの活動を合わせて「地域学校協働活動」と総称し、その活動を推進する体制を、今後、地域が学校と協働する枠組みとして、「地域学校協働本部(44)」に発展させていくことを提言する。

(44)第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)において、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組など「保護者はもとより、地域住民の参画により子供たちの学びを支援するための体制」を平成29年度までに全国に整備することとなっている。


(2)地域学校協働本部の在り方
(地域学校協働本部に必須の要素)
 地域学校協働本部についての特徴は、社会教育のフィールドにおいて、地域の人々や団体により「緩やかなネットワーク」を形成した、任意性の高い体制としてイメージされるものである。一方で、より多くの、より幅広い層の地域住民が参加しやすい、つながりの緩やかなものではあるが、参加者の世代交代等も経ながら永く持続していくものでもある。
 各地域で展開されている活動の実態、組織の現状と課題から考察すると、この体制が恒常的、組織的、安定的に実質を伴ったものとして持続するためには、地域と学校が子供たちの育成の方針など目指すべき方向性を共有しつつ、「支援」から「連携・協働」、「個別」の活動から「総合化・ネットワーク化」へと発展させていくことを前提とした上で、次の3要素が必須となる。
①コーディネート機能
②多様な活動(より多くの地域住民の参画による多様な地域学校協働活動の実施)
③継続的な活動(地域学校協働活動の継続的・安定的実施)
 具体的にどのような内容の活動が行われるかは、地域の実情、本体制の発展段階に応じ、多様であるものと考える。例えば、放課後子供教室から始まり、次に学校の授業の支援が加わり、さらに、郷土学習の共同企画や学校と地域の行事の共催等を実施するという場合もあれば、学校の環境整備や登下校の見守りから始まり、放課後や土曜日の教育、家庭教育支援の取組に拡張する場合もある。このように、地域学校協働本部の構築に向けては、このような様々な活動の全てを最初から行うことを求めるのではなく、それぞれの地域における学校との協働活動の進展状況に応じて、まずはその地域と学校の子供たちの成長にとって何が重要であるかを地域で共有しつつ、ある程度の期間を見越したビジョンを持つことが重要である。その上で、その活動主体のコーディネート機能を強化し、より多くの、より幅広い層の活動する地域住民の参画を得て、活動を広げ、継続的な活動を行っていく中で、徐々に活動を充実し、活動間の横の連携を促進し、学校と地域との連携・協働関係を構築していくことが重要である。

(これまでの学校支援地域本部等から地域学校協働本部への発展)
 地域によっては学校支援地域本部が既に設置され、中心となって、地域と連携した学校支援活動を展開している場合がある。このような場合においては、学校支援地域本部の機能を基盤として、引き続きその活動を発展させながら、徐々に、①コーディネート機能を強化し、②より多くの、より幅広い層の活動する地域住民の参画を得て、活動の幅を広げ、③継続的な地域学校協働活動を実施していくことで、地域学校協働本部へと体制が発展していくことが期待される。
 また、地域や学校の実情やそれまでの経緯によって、地域学校協働活動を実施する組織体制や発達の度合いは様々な違いがあり、それぞれの違いを踏まえつつ、整備を進めていくことが望まれる。例えば、地域によっては、放課後子供教室における企画運営会議等の機能を生かして学校支援や地域活性化のための活動を展開している地域もあり、放課後子供教室における地域と学校との協働活動を担う部門が、学校支援活動や地域社会における地域活動等のコーディネート機能を発展的に整備していくことで、地域学校協働本部へと体制が進化する場合など、地域学校協働本部の整備には様々なケースが考えられる。
 なお、このような機能を担う主体が、それぞれの経緯や特色を踏まえて独自の名称を使用しているケースも見られ、地域学校協働本部として活動する際にもそのような独自の名称を使用することを妨げるものではない。
 一方、これまでに学校支援地域本部や放課後子供教室等の活動が行われていない地域においては、まずは最初の一歩として、地域と学校が連携・協働して学校支援活動、放課後の教育活動や地域活動等のいずれかを実施する基盤づくりを加速し、地域学校協働活動を開始していくことが重要である。

(コミュニティ・スクールとの関係)
 地域学校協働本部の整備を推進する際には、同本部とコミュニティ・スクールとの両者が相互に補完し、高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要である。両者の一体的・効果的な推進の在り方については、第4章で述べる。
 また、地域学校協働本部のパートナーとなる学校がコミュニティ・スクールではない場合には、地域学校協働本部による地域学校協働活動の実施を通じて、その活動が学校や子供たちに評価され、教職員と地域住民等との信頼関係が醸成されていく中で、地域の活力を学校運営により生かしていくことを目指し、コミュニティ・スクールの導入につながっていくといった効果も期待される。

(地域学校協働本部の更なる機能強化)
 本部の機能を更に進めるものとして、学校教育部局との連携強化や、教育委員会だけではなく首長部局の各部局との連携強化を推進することが挙げられる。これにより、取組の幅が広がっていき、子供たちの教育内容等の充実につながることが期待される。さらに、地域にある高等学校等と連携することは、設置者の違いを超え、高等学校や高校生等も協働の輪に入ってもらうことで、ネットワークのつながりが広がっていくことになる。
 具体的には、高等学校等の所在する地域の小学校や中学校に係る地域学校協働活動に高等学校等や高校生等が参画する、若しくは高等学校等がその所在する市町村の住民等と地域学校協働活動を実施するといったような取組が考えられる。このような取組を促進していくためには、学校が所在する地域において、都道府県教育委員会と市町村教育委員会とが密に連携を取って、子供、地域住民、保護者、学校のそれぞれにとって地域学校協働活動がより有意義なものとなるよう努めていくことが必要である。
 また、自分の卒業した小学校や中学校のある地域から離れた地域で暮らす場合において、自分の卒業校でなくとも、「地域の学校も自分の学校」として、自分の暮らす地域の学校に対しても関心を持って協働の輪に入っていくことにより、ネットワークのつながりが広がることとなり、今後は、このような意識の醸成も重要である。
 さらに、地域学校協働本部への参加者一人一人が学び合う場を持って、子供の教育や地域の課題解決に関して、共に学び続けていくことは、正に生涯学習社会の実現のために求められることである。

(地域学校協働本部の有する可能性と留意点)
 地域が学校との連携を深める中で、子供たちにとって、地域は学校や家庭とは異なる第三の場として安心な居場所となる。また、地域学校協働本部に様々な悩み等を相談できる家庭教育支援の活動や機能が組み込まれることにより、孤立した保護者を支えることにもつながる。さらに、子供たちの非行防止、健全な育成の観点からも、地域学校協働活動を通して、放課後等の安全で健やかな居場所を作り、地域住民等が子供たちの成長を見守っていくことが重要である。
 なお、このような協働体制を目指すに当たり、最初の段階から学校に対して地域づくりへの過度な関与を求めることは、学校現場における負担を増大させる可能性もあることから、そのような協働の取組の基礎は、まず、地域住民等による学校支援の取組によって地域との接点が作られ、地域と学校が、子供の教育に関わることを通じ、相互の信頼関係が醸成されていく中で徐々に形成されていくものであることに留意する必要がある。加えて、地域住民と学校、地域住民同士の信頼関係の醸成には、どの地域においても相当数の時間と経験の蓄積を要するものと十分に認識し、地域の特色や実情を踏まえつつ、社会教育としての協働体制を整備・強化していくことが重要である。

2.地域における学校との協働体制の整備の方向性
 今後、地域における学校との関係を連携・協働へと発展させるとともに、地域住民自らが生活する地域を創っていくという考え方の下、全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるようにすること、また、住民が子供たちの成長を支える地域学校協働活動に参画する機会を得ることができるようにすることが必要である。この達成に向けて、地域における学校との協働の取組を強く推進していくため、地域が学校と協働する枠組みである地域学校協働本部が、早期に、全小・中学校区をカバーして構築されることを目指す。その際には、複数の小学校や中学校等を対象とするなどして地域学校協働本部を整備していくなど、それぞれの地域や学校の特色に応じて効果的な協働体制の整備を図っていくことが重要である。また、小・中学校のみならず、高等学校、幼稚園、特別支援学校、高等専修学校においても有効な取組であるため、地域の実情に応じてこれらの学校も巻き込んだものとしていくことが重要である。
 特に、高等学校に係る地域学校協働活動を推進していくことは、高等学校の特性を生かした展開により、より幅広い地域住民、企業、団体等の参画を促進する可能性がある。
 また、こうした取組を通じてその所在する地域の小学校や中学校と連携することで、活動全体の活性化にもつながることが期待できる。
このように、全国どの地域においても地域学校協働活動が推進されていくよう、地域による学校支援活動等を含む社会教育に関する事務を行う都道府県及び市町村の教育委員会において、域内の地域学校協働活動を円滑かつ効果的に推進するための体制の整備その他の必要な施策(例えば、地域学校協働本部等の体制の整備、コーディネーターの配置、地域住民に対する地域学校協働活動に関する情報提供や理解促進等)を講じることとすることが必要である。
 他方、地域や学校の実情、特色、経緯によって、地域学校協働活動を実施する体制の在り方は異なり、その進展状況にも幅があり得る。また、地域学校協働本部は、学校支援地域本部や放課後子供教室等の活動を基盤にして、「支援」から「連携・協働」への理念の転換を図りながら、コーディネート機能の強化、より多くの地域住民の参画、継続的な地域学校協働活動の実施を経て発展していくことが期待される。このため、地域学校協働活動を推進するための体制整備としては、都道府県や市町村の教育委員会において、それぞれの地域や学校の特色や、域内における体制整備の進捗状況に応じて、その責任の下に地域学校協働活動の推進に係る様々な体制の整備のための施策を講じることが必要である。
 都道府県や市町村の教育委員会としては、それぞれの域内の地域や学校の実情・特色や域内における整備状況を踏まえて、地域学校協働活動の推進に関する方針を定めて、どのような施策を講じていくべきかを検討し、実施していくことが必要である。
 このため、今後、都道府県や市町村の教育委員会は、まず、各学校区の活動を把握し、既に学校支援地域本部や放課後子供教室の活動、また、公民館を中心とした社会教育活動等が行われている場合も含め、今後、地域学校協働活動の推進に向けて、どのような活動を充実していくべきか、どのような体制で地域と学校との連携・協働を促進していくかについて検証を行うとともに、地方公共団体全体としての今後の推進の方向性を示していくことが重要である。
 このように、都道府県や市町村の教育委員会において、地域学校協働活動の推進に関する方針を検討する際には、地域の社会教育に関する諸計画の企画・立案、職務に必要な調査研究を行う等の職務を担う社会教育委員に意見を求めたり、調査研究を依頼したり、地域学校協働活動の推進に関し識見を有する者の協力を得て検討を進めていくことも有効である。
 また、このような地域学校協働本部は、将来的には、子供たちを社会の主体的な一員として受け入れ、様々な実践への参加を促す機能を有する体制の構築へと進化・発展することが考えられる。その中で、子供も大人も加わって、ワークショップ等の手法を用いつつ、地域課題や地域の将来の姿、さらには子供たちの体験活動やキャリア教育等について議論を重ね、評価を加え、修正を繰り返すなどして、実践を継続し、改善の方向を探ることも期待される。そのような営みによって、より多くの、より幅広い層の地域住民が参画し、住民の意思を作っていくことは、地域の様々な課題に対して、それを解決しつつ、地域を経営することにもつながるものである。

第4節 地域における学校との協働のための取組の推進
【ポイント】

◆地域住民や学校との連絡調整を行う「地域コーディネーター」及び複数のコーディネーターとの連絡調整等を行う「統括的なコーディネーター」の配置や機能強化が必要。
◆地域コーディネーターの持続可能な体制の整備、人材の育成・確保、質の向上が重要。
◆統括的なコーディネーターの役割や資質・能力を明確化し、その配置を促進。
◆地域学校協働活動の内容の充実、活動場所の確保、幼稚園、高等学校、特別支援学校等の特性を踏まえた取組の推進、家庭教育支援の充実や安心して子育てできる環境の整備や福祉等との連携を推進。


1.地域における学校との協働のための体制の整備
 体制の整備において重要となるのは、コーディネート機能の強化である。地域学校協働活動としては、地域住民、保護者、企業、団体等、様々な関係者が、学校支援活動、放課後や土曜日の学習支援活動、家庭教育支援活動、学びによるまちづくり等の地域活動といった様々な活動に参画することが想定され、学校や学校運営協議会と連携を図りつつ、時には学校との連絡窓口となり、時には住民、保護者間の調整役となって協働活動を推進していくコーディネーターの役割が重要である。
 これまで、地域による学校支援活動等に際しては、主に学校区における活動の連絡調整役として地域人材が務める「地域コーディネーター」がその機能を果たしており、地域の実情に応じた様々な学校づくりや地域づくり活動等の企画調整を担ってきている。
 また、域内の各学校区の協働活動の進展に応じて、学校区ごとのコーディネーター間の連絡調整を行ったり、域内の地域コーディネーターの育成を支援したりする「統括的なコーディネーター」の必要性も高まってきている。
 今後は、両コーディネーターの配置促進や機能強化が重要である。

(1)地域コーディネーター
(地域コーディネーターの持続可能な体制の整備)
 地域における学校との連携の課題でも述べたとおり、これまでの体制では、多くは学校支援活動、放課後子供教室や土曜日の学習支援といった活動ごとに企画調整がなされ、活動間の効果的な連携によるそれぞれの活動の充実の視点が不足している傾向があった。今後、地域コーディネーターの役割は、これまでのように学校支援活動や放課後子供教室といった各活動ごとの担当にとどまらず、より広い視野で地域における学校との協働体制を作っていくことが必要である。
 また、地域コ-ディネーターによるコーディネートは、
・地域住民が主体となって活動する場合
・PTAが主体となって活動する場合
・NPO等と協働して活動する場合
・公民館など社会教育施設等を拠点に活動する場合
など地域や学校の実情に応じて、様々な態様で行われている。
 どのような場合であっても、地域に根付いていく継続的な取組を行うことができるよう、持続可能な体制を整備していくことが必要である。具体的には、たとえ地域コーディネーターを務める人物に交代があっても、担当していた地域学校協働活動が継続した取組となるよう、都道府県や市町村の教育委員会において、地域コーディネーターの活動を行うための研修会等を通じて候補となる人材を育成・確保していきながら、必要な研修を修了したこと等を踏まえた職能的な要件を課し、資質・能力等が備わった別の地域人材がコーディネーターを引き継ぐ仕組みとする等の工夫が必要である。

(地域コーディネーターとなる人材の育成・確保)
 地域学校協働本部の中核を担う地域コーディネーターは、様々な人々や活動をつなぐ役割が大きく、それぞれの地域コーディネーターの経験の共有と継承が重要であるため、地域コーディネーター間の十分な情報共有や研修等を通じて、相互に学び合うことが有効である。
 さらに、地域コーディネーターは、地域社会と関連の深い教育改革の動向を把握することが大事であり、学校教育で今後期待されていることについて、地域コーディネーターに対する十分な研修の機会が提供される必要がある。また、その際、大学や専門学校等との連携を図ることも有効である。なお、地域コーディネーターは、子供たちの状況に触れることになるため、守秘義務を重視し、責任の所在の明確化を図る場合は、地域の実情に応じて、委嘱等の契約を行うなどのルールを設けることで、学校との情報共有が円滑になるものと考えられる。
 また、地域コーディネーターとなる地域人材の確保は最も重要である。地域コーディネーターは、ボランティア経験者、PTA関係者・PTA活動経験者、地域の自治会等でネットワークを持っている人、社会教育も経験している元校長・教職員など、地域の実情に応じて様々な人が考えられる。それぞれの地域や学校の実情に応じて、求められる役割には幅があり得るが、効果的なコーディネート活動を行うことができるよう、例えば、
・地域学校協働活動の推進に熱意と識見を有する
・地域学校協働活動への深い関心と理解がある
・地域住民や学校、行政の関係者とのコミュニケーション能力や、説得し、人を動かす力がある
・地域課題についての問題提起、整理、解決策の構築等を仲間と共に進めることができるファシリテート能力にたけている
といった能力・資質を有していることが望まれる。都道府県や市町村においては、このような資質・能力を有する地域人材の確保に努めるとともに、このような資質・能力を育成していくことを目指して、地域コーディネーターに対し、それぞれの経験段階等に応じた研修会、ワークショップ等の人材育成を進めていくことが重要である。また、国や都道府県においては、各市町村で活躍する地域コーディネーターの参考となるよう、効果的なコーディネート活動の具体的な事例収集や分析を行い、その情報提供を行っていくことが必要である。

(2)統括的なコーディネーター
(統括的なコーディネーターの必要性)
 これまで、地域における学校支援活動等において、地域や学校に深い理解と関心を持ち、熱意を持って献身的に活動に取り組む地域コーディネーターの活躍により、学校支援活動、放課後子供教室、土曜日の学習支援活動等が徐々に発展を遂げてきている。
 今後、このような学校と地域との連携が発展を遂げてきた都道府県や市町村において、新たなステージとして地域学校協働本部の体制の整備を目指していく上で、地域コーディネーターの資質向上・ネットワーク化促進、各学校区における地域学校協働活動の充実・活性化、地域学校協働活動の未実施地域の取組開始の支援等を図っていくため、都道府県若しくは市町村の学校地域協働に関する統括的なコーディネート機能の強化が必要である。
 都道府県や市町村においては、それぞれの規模、特色や実情、域内における地域学校協働活動の展開状況、そのための体制の整備状況等を踏まえつつ、域内の地域学校協働活動の経験が豊富な地域コーディネーター等の中から、高い資質・能力を有する者を統括的なコーディネーターとして委嘱・配置していくことが重要な方策となり得る。都道府県や市町村の教育委員会において、域内全体の地域学校協働活動の推進を担当する部門の設置や職員を配置するといったことも考えられる。また、都道府県や市町村の教育委員会において、NPO等の団体を活用して統括的なコーディネート機能を強化することも考えられる。

(統括的なコーディネーターの役割)
 地域における学校支援活動等が充実・発展してきている地方公共団体によっては、地域コーディネーターに加え、このような統括的なコーディネーターを配置することにより、実際に、地域コーディネーター同士のネットワークづくり、地域コーディネーターの負担軽減、地域コーディネーター人材の確保、地域における学校支援活動の拡大等につながったといった効果が上がった例も見られる。統括的なコーディネーターの役割は、地域や学校の実情・特色に応じて様々なケースがあり得るが、主として、
 ・地域学校協働活動の未実施地域において新たに取組を開始する際に、地域学校協働本部の立ち上げやそれぞれの定着の度合いや実情に応じた、地域学校協働についての助言や先行事例の提供
 ・その経験を生かして、市町村・都道府県が実施する研修・説明会等の調整、講演など、地域コーディネーターの育成、候補人材の発掘・確保の支援
 ・各学校区の地域コーディネーターのリーダー的存在として、それぞれの地域コーディネーター間の連絡調整を行うこと
 ・その経験を踏まえ、各学校区の地域コーディネーターが直面する地域学校協働活動に対する適切な助言・指導や参考となる事例の紹介
 ・地域学校協働活動に参画する地域住民の理解を促進するために、市町村や教育委員会が行う説明会
 ・シンポジウムにおける地域学校協働活動の状況やモデル事例の紹介といったことが想定される。

(統括的なコーディネーターに求められる資質・能力)
 また、各学校区で活躍する地域コーディネーターの確保と同じく、こうした市町村域を統括的にコーディネートする役割を担う地域人材の確保も重要である。統括的なコーディネーターについては、地域コーディネーターのリーダー的な存在となることから、こうした役割を担う人材は、上記1(1)の地域コーディネーターに求められる能力・資質に加え、
 ・地域コーディネーターや地域ボランティアを務めた経験があるなど、地域学校協働活動の経験が豊富であること
 ・人材育成の能力やリーダーシップがあること
 ・地域コーディネーターを含めた関係者等からの社会的信望が厚いこと
等も求められる。

(統括的なコーディネーターの役割・資質能力等の明確化)
 地方公共団体によっては、既にこのような統括的なコーディネーターを活用しているところもあるが、その主な役割や資質能力については、明確になっていない。今後、地方公共団体の判断により、このような新たな機能を担う統括的なコーディネーターを委嘱するなどして活用し、効果的で質の高い活動を行い、都道府県・市町村の広い範囲において学校地域協働の促進が図っていくことができるようにするためには、国は、統括的なコーディネーターに求められる役割・資質等といった事項について、明確化していくことが必要である。

(3)統括的なコーディネーターと社会教育主事との連携
 都道府県及び市町村の教育委員会に置かれる社会教育主事は、社会教育を行う者に対して専門的技術的な助言・指導や、教育委員会主催の社会教育事業の企画・立案等の職務を担っており、地域と学校の協働活動が円滑に進むよう、地域コーディネーターや統括的なコーディネーターとなり得る人材を見いだし、育成したり、積極的に情報共有を図ったりすることが望まれる。今後、このような地域学校協働活動に関することを含め、さらに、社会教育主事に必要な資質や養成・研修の在り方について検討を行っていくことが必要である。

2.地域における学校との協働による活動の充実
(1)今後求められる活動内容等
 地域における学校と協働した活動の「内容」は、現状では、授業の補助として、大勢の地域人材の一斉支援によるドリルの丸付け補助や、地域人材の得意分野を生かした書道や家庭科の裁縫等の個別支援等が行われており、また、放課後や土曜日等では、例えば、読み聞かせ、昔遊び、実験・工作教室、自然体験活動、スポーツ・文化活動や地域の伝統芸能等のほか、宿題や基本的な学習習慣づくり等が行われている。今後は、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、社会の状況を幅広く視野に入れよりよい社会を創るという目標を学校と地域で共有し、子供たちが社会に向き合い、自らの人生を切り拓いていく資質・能力を育んでいくという観点も踏まえて、より幅広い地域住民が参画し、地域と学校が連携・協働して、活動内容を充実していくことが重要である。例えば、活動に参加する子供たちの発達段階に応じ、地域の協力による職場体験、地域の課題を分析・解決する学習、地域住民等と協働する地域活動の企画・参加など、地域の実情や特色を踏まえて、地域と学校の連携・協働により継続的に活動内容を検討していくことが肝要である。
 なお、その活動「時間帯」は、学校の授業への協力のほか、平日の学校の放課後や登下校中等の時間帯、土曜日、日曜日、長期休業中等が挙げられる。
 活動に参画する「子供」については、幼稚園・保育所、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、高等専修学校等の幼児・児童・生徒が考えられ、これからの地域を担う一員としての観点からは、特に中学生や高校生等の参加が重要である。
 その際、経済的な理由や家庭の事情等で家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身に付いていなかったりする子供たちへの地域住民等の協力による学習支援や体験活動の機会を充実していくことが重要である。また、地域において仕事と子育てが両立できる環境づくりのため、地域住民等の協力により、放課後や土曜日等の安心・安全な居場所を設け、学習支援、体験・交流活動を提供することも重要である。これらにより、子供たちの学習する環境が整い、学習習慣が身に付いていくことで、地域全体で多くの子供たちを見守り、誰もが安心して子育てできる環境を整備することにつながるとともに、孤立しがちな保護者も、地域学校協働本部があることで、気軽に悩みを相談しやすくなるなど、家庭教育への重要な支援となる。
 活動に参画する「大人」については、保護者、PTA、社会教育関係団体、地域の自治会、NPО等や青年会議所、企業、経済・労働関係団体、大学や専門学校等の高等教育機関、学校の元教職員や地方公共団体の元職員等の協力を得ることが挙げられるが、より多くの、より幅広い層の人々で取り組むことが重要である。これからは、多様な社会体験、生活体験を経た60 代後半以上の人々が増えていく時期でもあり、多くの人々が学び合いながら、地域の教育活動に参画していくことが望まれる。 また、活動に参画する地域住民等は、地域で子供たちの成長を支えるということを自覚し、学校等の関係者と協力して取組を行っていくことが重要である。
 子供の教育に対する責任を社会的に分担する観点から、放課後の時間帯や土曜日、日曜日、長期休業中等に行われる地域における活動については、基本的には、地域が主体となって行っていくべきものである。教職員の多忙化が大きな課題となっている状況の中で、こうした活動について地域と学校が情報を共有することは重要であるが、教職員が子供と向き合う時間を確保する観点等からも、教職員が様々な地域活動に参加し地域課題の解決に取り組むことを過度に求めていくことのないよう十分に留意する必要がある。

(2)活動場所の確保等
 地域における学校との協働による活動の場所は、「放課後子供教室」など学校の教室やグラウンド等で実施するのが適当と考えられるもののほか、学校外で行うことが適当なものもあるが、いずれにしても、その趣旨、内容に応じて最も適切な活動場所を確保することが求められる。
 学校内の施設で活動を行う方が適当と考えられるものについては、①施設整備面での工夫、②余裕教室の活用など施設の有効利用を図ることによる工夫、③施設管理面での管理責任等の課題の解決を図るための工夫について、教育委員会が主体となり、学校や地域学校協働本部と積極的に連携・協働して解決策を見いだすことが求められる。
 特に、上記③については、既に、活動を学校内の施設を利用して行う場合の管理責任を学校に委ねるのではなく、教育委員会の責任とすることを明確にするといった工夫を行っている実例も見られるところであり、国は、こうした実例を他に情報提供することが有効である。
 学校は、子供たちの学習・生活の場であるのみならず、地域コミュニティ形成の核となったり、災害時に地域住民の避難所となったりと、多様な役割を担っているものである。学校がこうした多様な役割を担うことを踏まえ、教育環境の改善を図りつつ、地域の実情に応じ、地域住民が利用することも念頭に置きながら、安全・安心で質の高い施設整備を行い、その活用を進めることが重要である。例えば、学校施設を整備する際には、地域への学校開放を前提としたコミュニティスペースを設けることや、社会教育施設等と複合化した施設とすること、既存の学校施設において余裕教室が生じている場合には地域住民が必要とする他の公共施設の用途に転用すること等により、日常的に地域住民が集う地域コミュニティの拠点となるものにすることが考えられる。
 なお、学校外で活動を行う場合の活動の場所は、公民館等の社会教育施設や、児童館その他の公共施設、商店街など、地域との協力の下で様々な場合が考えられ、活動場所を広げることは、活動内容の充実にもつながるものである。

(3)幼稚園、高等学校、特別支援学校、高等専修学校の特性を踏まえた取組の推進
 幼稚園、高等学校、特別支援学校や高等専修学校については、小・中学校と比べると地域の概念が異なるが、社会全体で子供たちを育むことの重要性はどの段階でも変わらないことから、学校種の特徴を生かしつつ、幼児・児童・生徒の発達段階等に応じて、地域における学校との協働体制を構築する必要がある。
 幼稚園については、地域との協働による幼児期の豊かな体験活動の充実、保護者も参加する小学校との円滑な接続に向けた取組の充実、近隣の地域との協働による保育所との円滑な連携の推進等が期待される。また、平成27 年4月からは、幼児期の学校教育・保育の質の向上をはじめ、預かり保育や子育て相談等の地域の子供・子育て支援を総合的に推進する「子ども・子育て支援新制度」が開始されており、こうした新制度の取組を進め、幼児期の子供一人一人の健やかな成長を着実に支援するためにも、地域学校協働本部における幼稚園等との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。
 高等学校等については、今後望まれる授業改善の視点である「アクティブ・ラーニング(45)」の有効な展開の観点からも、地域学校協働本部との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。こうした体制構築が進むことにより、高校生等が地域の商店街、企業、NPO等の団体、地方公共団体等と連携し、地域課題の解決に参画する取組が進めば、キャリア教育の推進や地域貢献にもつながるとともに、地域に愛着を持ち、自分が学んだ地域で働きながらその地域を活性化していくことにつながっていくことも期待される。高校生が地域課題の解決に取り組む活動に参画することは、高度な課題解決型の学習への意欲を喚起する上で有意義なものとなり得る。また、高校生等が地域の小学校
や中学校に係る地域連携活動にボランティアとして協働の輪に入ることで、ネットワークのつながりが広がっていくことも期待される。
 特別支援学校については、当該学校に通う子供たちが自立し、社会参加できる環境の充実には、保護者のみならず、地域、医療、福祉等の関係機関との連携が必要であり、ここでも地域学校協働本部との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。
 なお、今後このような学校種との連携・協働による地域活動を充実していくに当たり、地域においては、地域学校協働本部の活動を通じて、幼稚園、小・中学校、高等学校等、特別支援学校の各段階の学習を全体的に理解する視点を持つことが重要である。
 こうした視点を持つことにより、例えば、「高等学校でこのような学習が成り立つためには、小・中学校段階でこのような活動が必要であり、また、地域と連携・協働した支援活動は、子供たちが地域に目を向けるようになり、将来的に必ず自分たち地域に返ってくるものである」という関連性が理解されるようになり、地域住民のモチベーションが高まるとともに、活動の充実に結び付くと考えられる。

(45)中央教育審議会教育課程企画特別部会の論点整理では、(「アクティブ・ラーニング」の意義)として、「思考力・判断力・表現力等は、学習の中で(中略)思考・判断・表現が発揮される主体的・協働的な問題発見・解決の場面を経験することによって磨かれていく。身に付けた個別の知識や技能も、そうした学習経験の中で活用することにより定着し構造化されていき、ひいては生涯にわたり活用できるような物事の深い理解や方法の熟達に至ることが期待される。また、こう
した学びを推進するエンジンとなるのは、子供の学びに向かう力であり、これを引き出すためには、実社会や実生活に関連した課題などを通じて動機付けを行い、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志を喚起する必要がある。」とされている。


(4)子供たちの抱える課題への対応や、家庭教育支援の充実等のための地域における学校、福祉等との連携
 地域が学校との連携を深める中で、地域は、子供たちにとって、学校や家庭とは異なる第三の場として安心な居場所になることが考えられる。
 地域学校協働本部には、直面する子供たちの課題等にもよるが、教育関係者のみならず福祉、医療の関係者との連携強化や、孤立しがちな保護者の支援という観点からも、地域の人材で構成する家庭教育支援チームと連携していくことが重要である。地域学校協働本部の中に家庭教育支援の機能も組み込むことで、家庭教育支援の充実や安心して子育てできる環境の整備を図るとともに、困難を抱える保護者への対応の充実を図ることが可能となる。また、孤立しがちな保護者が学校支援等の地域と学校が連携・協働した活動に参画するよう促し、実際に活動に関わることで、こうした保護者が前向きになり、家庭教育の充実につながることも期待される。
 家庭教育支援チームによる取組としては、保護者が主体的な家庭教育ができるよう、学習機会や情報の提供、様々な相談への対応、地域における居場所づくり、さらに、訪問型の家庭教育支援等の取組を推進することが挙げられる。

第5節 国、都道府県、市町村による推進方策
【ポイント】

◆国は、全国的に質の高い地域学校協働活動が継続的に行われるよう、以下のような、制度面・財政面を含めた条件整備や質の向上に向けた方策を実施。
 ○活動推進のための体制整備及びコーディネーターの役割・資質等についての明確化
 ○各都道府県・市町村における地域学校協働活動の推進に対する体制面・財政面の支援
 ○都道府県、市町村、コーディネーター間の情報共有、ネットワーク化の支援
◆都道府県の教育委員会は、地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、首長部局との連携・協働の下、ビジョンの明確化・計画の策定、市町村における推進活動の支援、域内の住民等に対する情報提供・理解促進活動、都道府県立学校等に係る活動の推進等を実施。
◆市町村の教育委員会は、地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、首長部局との連携・協働の下、域内のビジョンの明確化・計画の策定、体制の整備、コーディネーターの配置、研修の充実、地域の住民等への情報提供・理解促進等を実施。


 本章第3節において述べた今後の方向性に基づき、第4節に記載した地域における学校との協働活動を推進していくためには、地域住民、保護者等が様々な学校支援活動、放課後や土曜日の学習支援活動、地域の行事や文化・スポーツ活動等の地域活動に自ら積極的に参加していくことが何よりも重要である。これらの住民等の地域における学校との協働活動への参加を促し、活動を推進していくためには、国や都道府県・市町村により、それぞれの役割を踏まえつつ、コミュニティ・スクールの推進とも連携しながら、地域学校協働本部の整備を図っていくことが重要である。
 地域における学校との協働活動を全国的に充実していくための推進方策として、有効と考えられる方策は以下のとおりであり、国は、以下の推進方策を着実に実行することが必要である。各都道府県・市町村は、地域における学校との協働活動の促進に向けて、それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ、地域学校協働本部の整備その他の必要な施策を講じ、各地域において積極的な取組を進めていくことが必要である。

1.国の役割と推進方策
 これまでに述べてきた提言を踏まえ、国は、地域における学校との協働活動の全国的な推進を図るため、以下のように、制度面・財政面を含めた条件整備やこれらの活動の質の向上に向けた方策を総合的に推進していくことが必要である。

(1)基本的な枠組みの整備
 地域における学校との協働活動の推進のため、第3節で述べた地域学校協働本部を全国的に整備していくことが重要である。国は、地域学校協働本部の全国的な整備の推進のため、その基本的な目的、方向性について明確化し、整備の趣旨を広く普及していくことが必要である。
 第4節で述べたように、地域学校協働活動とは、学校支援活動、放課後や土曜日の学習支援、家庭教育支援及び学びによるまちづくり等の地域活動等により、地域と学校が協働して、未来を担う子供たちの成長を支えるとともに、持続可能な社会を創っていく取組である。このような地域学校協働活動を全国的に推進していくに当たっては、単に活動の数が増えるだけではなく、学校や参画する住民にとって有意義な活動となり、子供たちの成長につながる効果的で質の高い活動となることが必要である。このような目標・理念の下に、全国的に質の高い地域学校協働活動が継続的に行われ、子供たちが地域の協力を得て成長できるよう、また、継続的・安定的に地域の住民、保護者等がその活動に参加することができるよう、国は、都道府県や市町村において地域学校協働活動を推進するための体制整備その他の必要な施策(例えば、地域学校協働本部等の体制の整備、コーディネーターの配置、地域住民に対する地域学校協働活動に関する情報提供や理解促進等)を図っていくことについて、法令若しくはガイドライン等において明確にすることが必要である。
 また、第2期教育振興基本計画において、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組を充実するための体制を全国の小・中学校区に構築することが施策目標とされているが、国はこの着実な実施を通じて、地域学校協働本部への発展を目指して体制の整備を推進していくことが必要である。また継続的な整備を図るため、第3期教育振興基本計画において、地域学校協働活動の推進及び地域学校協働本部の整備に係る目標を掲げることを検討すべきである。

(2)地域コーディネーターや統括的なコーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上
 第4節でも述べたとおり、地域学校協働活動の全国的な推進のためには、それぞれの地域において学校との協働活動を実施する住民等の活動を支援し、連絡調整する地域コーディネーター及び統括的なコーディネーターによるコーディネート機能が非常に重要である。これらのコーディネーターの資質の維持・向上に向けて、国は、都道府県・市町村や社会教育関係団体等と協力しつつ、研修プログラムの開発・普及等のコーディネーターの育成施策を支援することが必要である。
 特に、地域における地域学校協働活動の進展により、地域コーディネーター間の連絡調整、地域コーディネーターの育成・資質向上、地域学校協働活動未実施の地域における地域学校協働活動の取組開始の促進等を行う統括的なコーディネート機能が重要となってきている。今後、都道府県や市町村において適切な人材を統括的なコーディネーターに委嘱することができるようにするためには、その求められる主な役割や資質等が明確となっていることが重要である。
 このため、国は、都道府県・市町村の教育委員会において適切な人材を育成・確保、配置することができるよう、統括的なコーディネーター等に求められる主な役割・求められる資質等について法令若しくはガイドライン等において明確化することが必要である。
 その際には、それぞれの地方公共団体の実情や方針によっては、統括的なコーディネーター等に関する職務を、地域学校協働活動に関する業務や調整の経験を有する社会教育主事や教育委員会の職員によって行うこともあることを踏まえて検討することが重要である。
 さらに、国は、都道府県・市町村の教育委員会において地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの整備の促進の参考となるよう、コーディネーターの活躍によって地域学校協働活動の促進に効果を上げている事例を収集し、市町村・都道府県教育委員会に情報提供を行うなど、その役割や効果的な活動内容について理解を図ることも重要である。

(3)体制面・財政面における支援の充実
 地域学校協働活動の推進に伴う体制面・財政面において、国は以下の取組を支援していくことが重要である。
 ・全国各地域において、地域住民等による学校との協働活動が推進され、各地域の子供たちがその活動を経験することができるよう、各地域へのコーディネーターの配置及び地域学校協働本部の整備の支援
 ・各地域における学校間の協働活動の連携の促進や未実施地域における取組促進等に向けた統括的なコーディネーター配置への支援
 ・地域コーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上に向けた研修・育成等の支援
 ・学校支援活動、放課後や土曜日等における学習、体験活動等の協働活動の充実に向けた支援

(4)都道府県、市町村、コーディネーター間の情報共有、ネットワーク支援等
 国は、地域学校協働活動の全国的な推進・充実に向けて、都道府県、市町村、コーディネーター間における情報共有、ネットワーク化を支援するため、以下の取組を実施していくことが重要である。
 ・地域学校協働本部の整備の促進に向けた好事例の収集・普及
 ・統括的なコーディネーター、地域コーディネーター間の研修・ネットワークを目的とした全国集会等の支援

【推進のための具体的方策】

◆国は、地域学校協働活動の全国的な推進を図るため、以下のような方策を推進していくことが必要である。
 ・都道府県や市町村の教育委員会による地域学校協働活動の推進に係る体制の整備についての法 令若しくはガイドライン等による明確化
 ・コーディネーターの資質・役割等の法令若しくはガイドライン等による明確化
 ・都道府県・市町村における地域学校協働活動に対する体制面・財政面の支援
 ・地域学校協働活動の全国的な推進に向けた、都道府県、市町村、コーディネーター間における情報共有、ネットワーク化の支援


2.都道府県・市町村の役割と推進方策
 今後、全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう、また住民が地域学校協働活動に参画する機会を得られるようにするためには、各地方公共団体において、域内の子供たちの成長や地域の振興・創生に向けたビジョンを掲げ、域内の住民、保護者、学校及び様々な関係機関や団体間でそれを共有しつつ、積極的に地域学校協働活動を推進していくことが必要である。
 その上で、都道府県・市町村の教育委員会は、それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ、域内における地域学校協働活動を円滑かつ効果的に推進するための体制の整備その他の必要な施策(例えば、域内の地域学校協働本部等の体制の整備、コーディネーターの配置、地域住民等に対する地域学校協働活動に関する情報提供や理解促進等)を講じることが求められる。
 それぞれの地域において、子供たちの成長を支え、地域づくりにもつながる地域学校協働活動を推進していくためには、都道府県、市町村における社会教育部局と学校教育部局の連携・協働の強化が不可欠であり、両者の連携・協働による取組が必要となるとともに、総合教育会議の活用等を通じた地域振興、社会福祉、医療、防災等を担当する首長部局とのパートナーシップを構築していくことも重要である。
 都道府県・市町村は、計画的・継続的に地域における学校との協働活動に取り組んでいくため、それぞれの地域の実情や特色を踏まえつつ、教育振興基本計画等に、域内の地域学校協働活動の推進に向けて、その体制の整備をはじめとする地域における学校との協働活動の推進について基本的な方針を掲げることが期待される。

(1)都道府県の役割と推進方策
 都道府県の教育委員会は、域内全域において地域学校協働活動が推進されるよう、域内の各市町村における地域学校協働活動に対する市町村間の調整や広域的な観点からの支援にその役割を重点化しつつ、域内全域での地域学校協働活動の充実・拡大や質の確保・向上に責任を果たしていくことが重要である。
 その前提の上で、都道府県の教育委員会は、域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、各都道府県内全域での地域と学校との協働活動を継続的かつ効果的に推進するため、その推進に係る体制の整備その他の必要な施策を講じることが必要である。地域学校協働活動の推進に向けてどのような施策を講じていくかについては、それぞれの地域や学校の実情・特色や域内における整備状況を踏まえて、例えば、域内の市町村における体制整備、コーディネーターの配置・育成、好事例の収集・情報提供、都道府県立学校に係る体制の整備、地域住民等に対する情報提供、理解促進活動等、必要な施策を検討していくことが求められる。
 特に都道府県教育委員会の重要な役割は、域内の市町村における地域学校協働活動の推進を広域的な観点から支援することであり、当該都道府県における子供たちの成長や地域づくりのビジョンに基づき、地域振興、社会福祉、医療、防災等を担当する首長部局とも連携・協働しつつ、域内の市町村における取組を広域的に支援することにより、都道府県全域において地域学校協働活動の活性化をリードしていくことが期待される。
 また、これまでの地域による学校支援活動等は、より住民に身近な市町村の小・中学校中心に行われてきたが、今後、都道府県は、特に地域とのつながりが深い高等学校等の都道府県立学校に係る地域学校協働活動を中心として、当該学校が所在する地域におけるニーズを踏まえつつ、関係市町村教育委員会との連携を図りながら、高等学校等の特色を生かした取組を進めていくことが重要である。

【推進のための方策】

◆都道府県の教育委員会は、域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、域内の地域学校協働活動の円滑かつ効果的な推進に係る体制の整備その他の必要な施策を講じていくことが必要である。どのような施策を講ずるかについては、首長部局との連携・協働の下、域内における取組状況も鑑みながら実施していくことが重要であるが、例えば以下のような施策が考えられる。
 ・域内の地域協働活動の推進に関する教育委員会としてのビジョンの明確化と計画の策定、地域学校協働推進活動の改善に向けた取組のフォローアップ
 ・域内の市町村における地域学校協働活動を推進するための体制の整備や取組の充実のための財政的な支援
 ・域内の市町村における地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの配置の促進、その質の向上に向けた研修やネットワーク化の促進
 ・域内の市町村における好事例の収集と情報提供
 ・地域学校協働活動への地域住民等の参画の促進、活動の質の向上に向けた域内全域の住民、保護者、学校等関係者に対する情報提供、理解促進活動
 ・都道府県立の高等学校等に係る地域学校協働活動の推進に向けた体制の整備、地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの配置


(2)市町村の役割と推進方策
 市町村の小学校や中学校は、住民にとって身近な存在であり、多くの地域住民等がアクセス可能であることから、これまでの地域における学校支援活動等において重要な場となっている。今後も地域学校協働活動の推進にとって、市町村の教育委員会は重要な役割を果たすことが期待される。今後、市町村教育委員会は、それぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、域内全域での地域と学校との協働活動を推進するため、その推進に係る体制の整備その他の施策を講じることが必要である。都道府県と同様に、市町村においても、域内のそれぞれの地域や学校の実情・特色や地域学校協働活動の推進体制の整備状況には違いがあるため、子供たちの成長に向けたビジョンをそれぞれの地域で共有し、地域振興、社会福祉、医療、防災等を担当する首長部局とも連携・協働しつつ、子供たちの成長のために何が求められるか、地域住民にとって何ができるかを検討しつつ、例えば、体制の整備、コーディネーターの配置・育成、地域住民等に対する情報提供や理解促進等、それぞれにとって必要な施策を講じていくことが肝要である。
 特に、地域と学校との協働活動が進んでいない地域においては、それぞれの地域の実情や抱える課題も踏まえつつ、例えば、統括的なコーディネーターの配置、当該地域の地域と学校との協働活動を担う人材の確保・育成、好事例の提供、様々なメディアを活用した効果的な情報発信、企画・立案の助言等を通じて、地域と学校との協働活動が展開されるよう必要な措置を講じていくことが重要である。

【推進のための方策】

◆市町村の教育委員会は、域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ、域内の地域学校協働活動の円滑かつ効果的な推進に係る体制の整備その他の施策を講じていくことが必要である。どのような施策を講ずるかについては首長部局との連携・協働の下、域内における取組状況を鑑みながら実施していくことが重要であるが、例えば以下のような施策が考えられる。
 ・域内の地域学校協働活動に関する教育委員会としてのビジョンの明確化と計画の策定、地域学校協働活動の改善に向けた取組のフォローアップ
 ・地域学校協働活動を推進するための体制の整備
 ・域内の地域コーディネーター、統括的なコーディネーター等の配置、その質の向上に向けた研修やネットワーク化の促進
 ・域内の地域学校協働活動への地域住民等の参画の促進、活動の質の向上に向けた理解促進活動


第4章 コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の一体的・効果的な推進の在り方について
【ポイント】

◆地域とともにある学校に転換するための仕組みとしてのコミュニティ・スクールと、社会教育の体制としての地域学校協働本部が、相互に補完し、高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要であり、当該学校や地域の置かれた実情、両者の有機的な接続の観点等を踏まえた体制の構築が重要。
◆普段からの情報の共有や、地域コーディネーターと地域連携の推進を担当する教職員との連携の強化を図るとともに、国は、一体的・効果的な推進のイメージや両者が円滑に機能している実例の発信等により、取組を促進。


1.コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の関係の在り方
 第2章で述べたとおり、コミュニティ・スクールは「地域とともにある学校」へと転換していくために有効な仕組みであり、学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進していく役割を明確化するとともに、その役割を具現化する機能として、地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い、これらの者における連携・協力を促進していく仕組みとしていくことが提言されている。地域とともにある学校として、より多くの地域住民や保護者等が学校運営に参画し、協働による取組を展開していくためにも、地域学校協働本部との連携を強化していくことが有効である。
 また、第3章で提言した地域学校協働本部は、社会教育の実践の場であると同時に、地域がきっかけを作ることで、子供たちが学習を深化させるものである。特に、これから発展していく地域学校協働本部が、コミュニティ・スクールと共に活動を推進することにより、学校教育を含めた子供たちの教育の質を格段に向上させること等も期待される。
 このように、子供たちのために、また、地方創生の実現のために、コミュニティ・スクールの機能、地域学校協働本部の機能のそれぞれを大切にしつつ、両者が相互に補完し、高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要である。
 さらに、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の推進に当たって重要なことは、学校と地域の特色を生かし、学校と地域が共に考え、地域全体が当事者として参画していくことであり、従前の自律的・主体的な取組を生かしながら、学校と地域が連携・協働して行う企画運営や活動を大切にしていくことである。すなわち、両者の関係は一律に示されるものではなく、当該学校や地域の置かれた実情、経緯、両者の有機的な接続の観点等を踏まえた体制を構築していくことが重要である。
 以上のように、それぞれの地域や学校における事情や背景により、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の整備状況等は異なるものであるが、全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう、それぞれの地域において、その実情に即してコミュニティ・スクールと地域学校協働本部の両者が整備され、両輪となって、学校と地域との連携・協働が推進されていくことを目指していくことが重要である。
 過渡的な状態にあっては、例えば、地域学校協働本部のみが整備され、学校運営協議会が設置されていないケースや、その逆のケースがある。このような場合であっても、地域学校協働本部における活動の実績によって学校と地域との信頼関係が構築され、学校運営協議会の設置につながる、また逆に、学校運営協議会への参画によって学校と地域との信頼関係が構築され、学校運営協議会に参画した地域住民や保護者等を軸に地域学校協働本部の体制の充実につながるということも期待される。
 また、第1章では「チームとしての学校の在り方の検討」が進められていることについて触れたが、「チーム学校」の実現を支える観点からも、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の整備を促進する必要がある。
 コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の整備は、必ずしも小学校や中学校等の個別の学校区単位で行われるものではない。地域においては、複数の小学校・中学校が連携して教育体制を構築している例や、従前より行われていた個別の学校区を越えた地域活動を基盤に地域学校協働活動の体制が構築される例も見られる。今後、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の在り方を考えていく上で、複数校の連携・接続にも留意しながら、学校と地域の連携・協働体制を構築していくことも重要である。

2.両者の一体的・効果的な機能の発揮のための方策
 地域とともにある学校に転換するための仕組みとしてのコミュニティ・スクールと、社会教育の体制としての地域学校協働本部が円滑に連結し、両者の機能を一体的・効果的に高めるための方策としては、それぞれの活動の企画等の段階から、双方の運営方針や取組計画等を共有したり、互いの取組の充実を目指し、重複を避けるための提案をしたりするなど、普段からしっかりと関係者間でコミュニケーションや情報共有を行うことが有効である。
 特に、地域学校協働本部において主に連絡調整を担う地域コーディネーターと、第2章で触れた地域連携の推進を担当する教職員や学校運営協議会の委員との連携の強化を図ることが重要である。加えて、統括的なコーディネーターは地域コーディネーター間の連絡調整等を主な役割とするが、各学校区における個別の地域学校協働活動に関して学校側と連絡調整を行う場合もあり、このような場合には、統括的なコーディネーターと、地域連携の推進を担当する教職員や学校運営協議会の委員との連携を強化していくことも重要である。
 それぞれの地域や学校の特色により様々なケースがあるが、地域学校協働本部において中核となる地域コーディネーターあるいは統括的なコーディネーターが、学校運営協議会の委員として地域における学校支援や学校運営に関する協議に参画したり、学校運営協議会の委員が、地域学校協働本部における企画調整に携わったりするなど、それぞれの経験や考え方を、お互いの発展のために生かす人的配置の工夫も有効である。
 今後、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部が両輪として共に一体的・効果的に機能を発揮していくよう、国は、地域や学校の実情や特色に応じて、両者の整備状況、発展段階、運営、連携体制、人的配置等には様々なケースが在り得ること、学校現場において、教職員が子供と向き合う時間を確保するための配慮が必要であること等を十分に認識しつつ、一体的・効果的な推進のイメージや両者が円滑に機能している実例を、都道府県・市町村の教育委員会、学校、地域学校協働本部の関係者等に情報提供・発信することにより、その取組の促進を図ることが必要である。


おわりに
 教育は、国民一人一人の幸せな人生を実現するための根幹を支えるものであり、国や社会の発展の基礎である。新しい時代の教育や地方創生を実現するためには、学校と地域がパートナーとして相互に連携・協働していくことが必要であり、本答申では、全ての公立学校において、地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして、コミュニティ・スクールを目指すべきであること、また、全小・中学校区をカバーする領域において、地域における学校との協働体制として、地域学校協働本部の構築を目指すべきであることを提言した。
 現状の様々な課題を乗り越えていくには、各教育委員会のビジョンとリーダーシップ、学校や家庭、地域の強い思いと具体的な行動が重要である。国はそれを後押しするため、都道府県教育委員会等と連携しつつ、本答申で示した学校と地域の連携・協働の趣旨が実現されるよう積極的な支援を行うとともに、全国的な取組状況を定期的にフォローアップし、成果と課題をきめ細かく把握しながら、関係者の理解の醸成や施策の改善につなげていく必要がある。
 今後の整備・発展が望まれる様々な体制において、一体的・効果的に機能を発揮する上で重要なことは、「地域でどのような子供たちを育てていくのか、どのような地域を創っていくのか」というビジョンであり、それを創り上げていくプロセスである。
 これには、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部といった特定の体制からの視点だけでなく、そのような体制を包含する「学校と地域」がどのように連携・協働していくか、という大きな視点が欠かせない。このような視点に立って、学校と地域がビジョンを共有した上で、協働による取組を積み重ね、大人も子供も学び続ける社会を共に創っていく必要がある。
 そして、主体性を持った社会の担い手育成と、あらゆる世代が一体となった地域活性化の両立を目指していくことにより、地域住民の主体的な参画による、子供たちの生きる力の育成と地方創生の実現につなげていく必要がある。
 誰かが何とかしてくれる、のではなく、自分たちが「当事者」として、自分たちの力で学校や地域を創り上げていく。子供たちのために学校を良くしたい、元気な地域を創りたい、そんな「志」が集まる学校、地域が創られ、そこから、子供たちが自己実現や地域貢献など、志を果たしていける未来こそ、これからの未来の姿である。このような未来を創り上げていくために、本答申の内容が速やかに実施され、国民一人一人がその理念を共有し、手を取り合い、行動していく一助となることを切に希望する。






関係法令等

地教行法

(市町村委員会の内申)
第三十八条  都道府県委員会は、市町村委員会の内申をまつて、県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする。
2  前項の規定にかかわらず、都道府県委員会は、同項の内申が県費負担教職員の転任(地方自治法第二百五十二条の七第一項 の規定により教育委員会を共同設置する一の市町村の県費負担教職員を免職し、引き続いて当該教育委員会を共同設置する他の市町村の県費負担教職員に採用する場合を含む。以下この項において同じ。)に係るものであるときは、当該内申に基づき、その転任を行うものとする。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  都道府県内の教職員の適正な配置と円滑な交流の観点から、一の市町村(地方自治法第二百五十二条の七第一項 の規定により教育委員会を共同設置する場合における当該教育委員会を共同設置する他の市町村を含む。以下この号において同じ。)における県費負担教職員の標準的な在職期間その他の都道府県委員会が定める県費負担教職員の任用に関する基準に従い、一の市町村の県費負担教職員を免職し、引き続いて当該都道府県内の他の市町村の県費負担教職員に採用する必要がある場合
二  前号に掲げる場合のほか、やむを得ない事情により当該内申に係る転任を行うことが困難である場合
3  市町村委員会は、次条の規定による校長の意見の申出があつた県費負担教職員について第一項又は前項の内申を行うときは、当該校長の意見を付するものとする。


(校長の所属教職員の進退に関する意見の申出)
第三十九条  市町村立学校職員給与負担法第一条 及び第二条 に規定する学校の校長は、所属の県費負担教職員の任免その他の進退に関する意見を市町村委員会に申し出ることができる。


第三節 学校運営協議会
第四十七条の五  教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校のうちその指定する学校(以下この条において「指定学校」という。)の運営に関して協議する機関として、当該指定学校ごとに、学校運営協議会を置くことができる。
2  学校運営協議会の委員は、当該指定学校の所在する地域の住民、当該指定学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者その他教育委員会が必要と認める者について、教育委員会が任命する。
3  指定学校の校長は、当該指定学校の運営に関して、教育課程の編成その他教育委員会規則で定める事項について基本的な方針を作成し、当該指定学校の学校運営協議会の承認を得なければならない。
4  学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項(次項に規定する事項を除く。)について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。
5  学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合において、当該職員が県費負担教職員(第五十五条第一  項、第五十八条第一項又は第六十一条第一項の規定により市町村委員会がその任用に関する事務を行う職員を除く。)であるときは、市町村委員会を経由するものとする。
6  指定学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。
7  教育委員会は、学校運営協議会の運営が著しく適正を欠くことにより、当該指定学校の運営に現に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、その指定を取り消さなければならない。
8  指定学校の指定及び指定の取消しの手続、指定の期間、学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期、学校運営協議会の議事の手続その他学校運営協議会の運営に関し必要な事項については、教育委員会   規則で定める。


学校教育法
第三十七条  小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。
○2  小学校には、前項に規定するもののほか、副校長、主幹教諭、指導教諭、栄養教諭その他必要な職員を置くことができる。
○3  第一項の規定にかかわらず、副校長を置くときその他特別の事情のあるときは教頭を、養護をつかさどる主幹教諭を置くときは養護教諭を、特別の事情のあるときは事務職員を、それぞれ置かないことができる。
○4  校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
○5  副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
○6  副校長は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う。この場合において、副校長が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う。
○7  教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
○8  教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)に事故があるときは校長の職務を代理し、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)が欠けたときは校長の職務を行う。この場合に   おいて、教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、校長の職務を代理し、又は行う。
○9  主幹教諭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる。
○10  指導教諭は、児童の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う。
○11  教諭は、児童の教育をつかさどる。
○12  養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
○13  栄養教諭は、児童の栄養の指導及び管理をつかさどる。
○14  事務職員は、事務に従事する。
○15  助教諭は、教諭の職務を助ける。
○16  講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する。
○17  養護助教諭は、養護教諭の職務を助ける。
○18  特別の事情のあるときは、第一項の規定にかかわらず、教諭に代えて助教諭又は講師を、養護教諭に代えて養護助教諭を置くことができる。
○19  学校の実情に照らし必要があると認めるときは、第九項の規定にかかわらず、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の養護又は    栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭を置くことができる。